【能登半島】震災・豪雨で被災「義務感の支援でなく、楽しんで”また来たい”と思ってほしい」。移住の20代男性が、いまホテル・喫茶バーをオープンする理由 珠洲市
記録的な豪雨が能登を襲う。「心がぽっきりと折れました」
開業から2カ月あまりが経過した、9月21日。記録的な大雨が能登半島を襲った。記憶に新しい人も多いだろう、「令和6年奥能登豪雨」。大地震に、豪雨に、「なぜまた能登で……」とショックを受けた人も多いのではないか。 その日の様子を、畠山さんは「過去で一番の大雨をくらった」と振り返る。 「朝から喫茶BAR「惚惚」に出勤して、営業の準備をしていました。雨だったので、あんまりお客さんは来ないかもなと思っていたら、解体業者さんやカフェに立ち寄った方から、僕たちがいるエリアが孤立してるっていうことを教えてもらって。「惚惚」から僕の家まで車で3分くらいなんですが、その間で道路が冠水していて通行止めの状態。 町外や金沢へ行くにも主要な道路なので、しばらくお店で待機するしかありませんでした。幸いにも、水も出るし食材もあるし、電気もつく。不便はなかったので、夕方までお店にいました」
「お店で待機しながら、報道の情報をチェックしている時に僕の家が映っていて。家から10秒くらいで海に行けるような、オーシャンビューのきれいな景色が自慢の家だったんですけど、家の玄関前が崖崩れのようになっていて。「あ、本当にやばいんだ」っていうのを自覚しました。 道路も通れるようになって家を確認しに行ったところ、やっぱりニュースの通りで。浄化槽も流されてしまっていたので、これでは生活ができないなと。とりあえずその日は最低限の荷物を乗せてお店に戻り、お店で寝ることにしました。あれから1週間ほど経ちましたが、今もお店で寝泊まりしている状態です(※取材は9月27日に実施)」
畠山さんの家から見える景色。家の前を流れる川が氾濫して道路が崩れてしまった。
町内の風景。全壊した家屋があちこちで見受けられる。
「notonowa」と「惚惚」に大きな被害はなかったため、営業は継続。とはいえ、やっとの想いで開業できたというのに、また天災によって状況が一変してしまった。自宅も被害を受け、暮らしもままならない。今の正直な気持ちはと聞くと、「僕も含めて、心が折れた人は結構多いと思います」と畠山さんは答えた。 「元日の震災から、やっと再建してきたというか。やっと、能登に行ってみても良いなと思える空気感が出てきていたと思うんですけど、それが、今回の豪雨でまたネガティブな印象になってしまった気がして。とりあえず能登からは出た方がいい、能登には近づかない方がいい、みたいな。 そうなってしまうのは一番不本意ではあったんですけど、そう見られざるを得なくなってしまったので、心が折れた人が多いんじゃないかなと思います。僕自身も、今回は本当にぽっきりいった感覚はあるので。 とはいえ、やっぱり生きていくしかない。やるしかない。立ち直るとはいかないですけど、僕もやれることはやりたいなって思うので」