【阪神JF】ブラウンラチェット95点!兄に負けない筋骨、聡明さ表す深い瞳
◇ 鈴木康弘氏「達眼」馬体診断 兄妹の血は水よりも濃い。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第76回阪神JF(8日、京都)ではブラウンラチェットをトップ採点した。達眼が捉えたのは世界のダートG1で活躍する兄フォーエバーヤングにも見劣りしない筋骨と、聡明(そうめい)さを伝える深い瞳。名牝の相ともいうべき容姿は無敗2歳女王に最もふさわしい。 ※点数は100点満点 兄(けい)たり難(がた)く弟(てい)たり難しといいます。2人とも優秀で、甲乙つけがたいとの意味。兄弟がそろって優れていることを「馬氏五常」ともいいますが、兄と妹が優秀な例も多い。柔道では兄妹で金メダリストに輝いた阿部一二三と詩、ハンマー投げの室伏広治と由佳、ゴルフの宮里聖志、優作と藍ら、いずれも同じ競技で名を成した兄妹です。 競走馬でも古くはキタノオーとキタノヒカリの兄妹から、ニッポーテイオーとタレンティドガール、ダイワメジャーとダイワスカーレット、ダンスインザダークとダンスインザムード、リアルスティールとラヴズオンリーユーなど兄妹G1ウイナーは枚挙にいとまがありません。 阪神JFで有力視されるブラウンラチェット。その非凡な馬体は国内外のダート重賞で5勝を挙げている兄フォーエバーヤングと比べても甲乙つけがたい。 富士山の広い裾野のように長いキ甲が後ろへせり出しています。腰から尻にかけてのつくりにもたっぷりゆとりがある。背中が長いキ甲と腰に挟まれて、実際よりも短く映るほどです。そんな恵まれた骨格に分厚い筋肉を付けている。特に肩と胸前。兄同様、ダートにも対応できそうな筋肉のボリュームです。トモにも強い筋肉を備えているため前後肢のバランスが取れている。 兄はリアルスティール産駒ですが、こちらは万能型種牡馬で知られるキズナの産駒。奇麗な首抜けと肩の滑らかな傾斜はキズナの影響でしょうか。ともあれ、首と肩の角度は芝適性を示している。 馬体以上に引きつけられるのが目です。「深い瞳」とでも表現すべきか。実に賢そうな目をしています。コントロール性は相当高いでしょう。カメラを向けてもハミで遊んでいるように子供っぽさは抜けていませんが、深い瞳が前程万里、高い将来性を告げています。名牝の相と言ってもいいでしょう。 仕上がりに狂いなし。毛ヅヤも冬場の牝馬にしては悪くない。兄たり難く妹たり難し。兄フォーエバーヤングと比べても優劣つけがたい2歳女王候補です。 (NHK解説者) ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。