80歳女性、投資詐欺で老後資金2000万円を失い貯金が0円に…「せめてもの救いは、体が丈夫であること」
◆口座から出金するために突きつけられた条件は まず、運用資金を専用口座に振り込むよう指示が入った。少額ではあまり意味がないだろうと思い、100万円振り込むことに。入金が完了すると、今度は会員用のLINEグループに招待された。 そこには20人ほどの参加者がいて、会話も自由にできるようになっている。私たちは、投資取引用のアプリをダウンロード。国際金市場に口座を開設してもらい、金の取引に参加することになった。 ここで行う投資は、自分で振り込んだ金額の10%(私の場合、100万円のうち10万円)を1回の取引で運用し、30%の利益が出る仕組みだった。つまり1日1回、しかもたった30分の取引で約3万円の利益が出るのだ。わー、すごい! 私は「ブルジョアがやっているのは、こんな取引なのか。だから生涯ブルジョアなんだなあ」と感激。 さらに、振込額が多くなると1日2回取引できるようになるシステムだったので、私は保有していた株を売却し、そのお金を運用資金につぎ込んだ。合計2000万円。振り返ると驚く金額だが、マネーゲームのようで楽しくなってしまったのだ。 3週間後、口座には5000万円以上のお金が貯まっていた。つまり予定通り、資金を2倍以上に増やしたことになる。Mさんは3月下旬に、「これで資金倍増計画は終了とします」と宣言。 そして、振込額が5000万円以下の人はLINEグループから退室し、口座にある資金をすべて引き出すよう指示があった。その最後には、目を疑う一文が。「資金を引き出す前に、手数料10%の支払いを済ませていただきます」 つまり、手数料を手持ちのお金で支払ってからでないと、口座から出金できないというのだ。手数料がかかることは知っていたが、取引口座に入っているお金が使えないとは聞いていない。私は約500万円を要求され、一瞬にしてパニックに……。
私はHさんに頼ることにした。最初に登録したアカウントは怪しいと思ったので、「公式」と書いてあるものをLINEで検索し、これまでの経緯を伝えた。すると、「それは詐欺なので、その損失を私のところで穴埋めしましょう」と返信が届いた。 私は冷静な判断ができず、藁にもすがる思いで生活費として残していた30万を振り込み、彼の手引きで原油取引に参加。 しかし、2回取引したところでMさんと同じ流れだと気づいた。終了したいと申し出ると、やはり出金手数料を要求される。おかしい。これも詐欺かもしれない。 やっとここで、交番へ駆け込んだ。警察官は、「SNS型投資詐欺ですね。手数料を振り込んでもお金は戻りませんよ」と言う。愕然とした。3月の終わりのことだった。 警察官は、LINEグループに参加していた人はサクラ、取引口座の金額もすべて偽物だと説明する。泣きついたHさんの公式LINEも、「公式」ではなかったのだ。にわかには信じられなかった。送られてくる情報は世界情勢や株価の変動なども押さえていて、専門家が考えた文章としか思えないものだったから。 悔しくて、寂しくて、悲しい。私以外に、こんなドジはいないだろう。私はシングルマザーで娘が1人いるが、彼女ももう立派な母親。頼ることはできない。何より恥ずかしいし、誰にも知られたくない。だから、墓場まで持っていこうと決めた。 ネットに疎い高齢者だったら、こんな目には遭わなかった。世の中はなんて残酷なんだ! 自分が甘い、疑わない人間だからか。あまりにもひどい末路だ。 ニュースを見ていると、私より高額の詐欺被害に遭った人がたくさんいるようだが、貯金0円になってしまった人はほとんどいないだろう。 今は毎日、卵、納豆、安い魚や肉で暮らす日々。せめてもの救いは、体が丈夫であること。神様はこれを予知して、私に健康を与えてくださったのだろうか――。きっとそうに違いない。
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