地球帰還へ 探査機「はやぶさ2」がリュウグウで得た“宝物”
初代「はやぶさ」の無念晴らした探査ロボ着陸
さらに、もう1つ予想外だったことがありました。それはリュウグウの表面が岩だらけだったことです。初代の小惑星探査機「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワも表面に岩塊がたくさんありました。しかし、イトカワの場合は中央部分に岩塊のほとんどない「ミューゼスの海」と名づけられた滑らかな場所がありました。そのため、はやぶさは岩塊が密集するゾーンを回避してミューゼスの海にタッチダウン(着地)することができたのです。 リュウグウには、イトカワのミューゼスの海に相当するような滑らかな場所はどこにもありません。プロジェクトチームからしてみれば、リュウグウがはやぶさ2のタッチダウンを拒んでいるように感じられたことでしょう。そのような状況でも、運用チームは着地できそうな場所を選定し、当初は2018年10月下旬に1回目のタッチダウンを実施するという計画を立てていました。 リュウグウの地表に着地して岩石を採取し、地球に持ち帰る「サンプルリターン」を目指すはやぶさ2にとって、タッチダウンは絶対にやり遂げなければいけないミッションでした。しかし同時に大きな危険を伴います。特に大小さまざまな岩塊が満遍なく広がるリュウグウでは、一つ間違うと岩などの障害物がはやぶさ2の機体にぶつかり、故障の原因となってしまうのです。プロジェクトチームはこの大きな試練に立ち向かいましたが、すぐには答えが見つかりません。そのためタッチダウン期日の大幅な延期を決め、時間をかけて最適な答えを探すことにしたのです。 ただしその間、何もせずにいたわけではありません。到着から3か月後の9月には、2台の小型探査ロボ「ミネルバII-1」の「イブー」と「アウル」を無事にリュウグウに投下することに成功しました。小型探査ロボを小惑星に届けることは、初代のはやぶさがチャレンジして成し遂げられなかったことです。10年以上の月日を経て、2代目のはやぶさ2が先代の無念を晴らしたことになります。また、探査ロボによる小惑星への着陸、さらに自律的な移動や写真撮影はいずれも世界初のことでした。さらに10月には、ドイツ航空宇宙センターとフランス国立宇宙研究センターが製作した観測用の小型着陸機「マスコット」を分離し、着陸させることに成功しました。このマスコットによって、はやぶさ2からは観測できない夜のリュウグウの様子などが分かるようになりました。