「男だから仕事」への違和感 育休を経て男性たちがたどり着いた「滅私奉公しない」働き方
■育休を経て気がついた社会が求める「男らしさ」
5年前、東京都に住む平松勇一さん(38)は育休を終え、仕事に復帰した。双子の娘と息子が生まれて1カ月が過ぎたころから、1年ほどの育休だった。 映像制作会社に勤めていた平松さん。子どもたちが生まれる前は、「早朝から深夜まで仕事」という日も少なくなかった。しかし、1年間の育休を経てその考えは変わっていった。 共働きの妻が一足先に仕事に復帰したあと、2カ月ほど「ワンオペ」育児を経験した。双子の命を1人で預かる重みを感じ、「育児うつ」になった。これまで妻にかけていた負担を痛感した。だからこそ、平松さんは仕事に復帰後も子育てに関わっていきたいと思っていた。だが… 「早めに帰る努力はしていましたが、フルタイムでの復帰だったので、帰宅するのが午後7時とか8時になってしまう。平日は妻に任せることで成立していた。もっと子どもたちに関わりたいのに、何もできない日々が続いていました」 仕事を終えたあと、双子の育児をこなしていた妻は、日に日に疲弊していった。心苦しさを感じていたが、仕事に打ち込みたいという思いも抱えていた。 「1年も休ませてもらったから頑張って結果を残さないといけない、という気持ちがありました。会社からも(育休前と同じように)仕事を振られ、結果を求められていると感じた。期待に応えたいと思っていました」 試行錯誤する中、新型コロナの感染拡大をきっかけに在宅勤務が始まった。通勤に使っていた時間で家事を済ませ、仕事を始めることができた。定時で仕事を終え、保育園から戻った子どもたちの世話もできるようになった。そんな日々を過ごすうち、平松さんはあることに気がついた。 「育休から復帰後に100%の働き方を求められたら、やはり頑張らざるを得ない。育休明けの女性に同じことを求めるかなと考えたときに、『男だから』求められているのかなと思いました」 仕事を優先させたいと考えていたのは、会社や社会が求める「男らしさ」に応えようとしていたからではないかと平松さんは考えるようになった。 「子どもが生まれる前までは、妻だけで双子の世話をしてくれるとさえ思っていた。自分の中に『男性は仕事、女性は家庭』みたいな考え方が刷り込まれていたのだろうなと。育休を経て、これまで(子育てをしている)女性たちが経験してきた苦しみを知ることができた。だからこそ、働き方を変えなくてはと考えるようになりました」 平松さんは、会社を辞め、4年前からフリーランスとして映像制作の仕事を続けている。会社に属していると、会社から求められる期待に応えようと、仕事を優先させてしまうことが多くなると考えたからだ。フリーランスになってからは、自分のペースで仕事をこなし、必要な収入を得ている。時間を自由に使えることで子育てとのバランスが取れるようになった。 「子どもが子どもでいてくれる時間はあっという間に終わってしまう。せっかく子どもがいる人生を選んだのだから、子どもとの時間を楽しんだ上で、キャリアをつくっていければいいのかなと思います」