「どう猛な犬は、殺傷能力のある凶器と一緒」闘犬に襲われ一変した生活 問われるモラルと飼育方法…安全に家族として迎え入れるには?
週末の昼下がり、交差点を自転車で帰宅中だった女性(85)が襲われた。路上に投げ出された女性は右腕をかまれていた。襲ったのは、世界最強の犬として知られる闘犬種、アメリカンピットブルテリア(ピットブル)。女性はこの22・6キロの雄犬に左耳もかみちぎられ、通常の生活が送れなくなった。 【写真】発症すると死が不可避… 水を飲むとけいれんする「恐水症」の症状も、最終的には呼吸困難に 予防接種率は「義務」なのに、7割に低迷 専門家「狂犬病の怖さが伝わっていない」
当時、飼い主はリードを腰に巻き、犬に引っ張られるまま歩いていた。ピットブルはその後、別の事件も起こし、重過失傷害罪に問われた飼い主の女性(27)は有罪判決を受けた。 適切に飼育されていないピットブルが逃げ出したり、人に危害を与えたりするケースが全国各地で相次いでいる。飼い主のモラルや管理のあり方が問われている。(共同通信=村社菜々子) ▽耳鳴りやまず、トラウマで妄想「人生強制終了」 事件が起きたのは、2022年11月27日午後1時ごろ、岐阜県各務原市での事だった。関係者によると、女性は自ら警察と消防に通報した。治療を受けたが耳鳴りがやまず、当時のトラウマもあり妄想や幻聴にさいなまれ、入院が続く。趣味だった友人とのカラオケも楽しめなくなった。 女性の知人は「本人の意志とは全く関係なく、強制的に人生を終了させられた」と悲嘆する。病院の規則で差し入れが許可されているゼリーを持って行ってあげることが多いが、面会室でゼリーを黙々と口に運ぶ姿を見るたびに、やり切れない気持ちでいっぱいになるという。
知人は静かに怒りを露わにする。「どう猛な犬は、強い殺傷能力のある凶器と一緒ではないか。どう猛性を十分認識していたなら、ほぼ自由に動ける状態で屋外になぜ連れ出すのか」 ▽2人目の被害者、部活へ向かう朝に突然 この犬はもう一人の被害者を出した。2023年8月31日午前7時ごろ、高校1年だった原口将さん(17)は部活に向かうため、同じ野球部の同級生と一緒に自転車に乗って川の土手を走っていた。その時、いきなり真横からかみつかれ、膝裏に鋭い痛みが走った。数カ所に牙が食い込み、深さは約2センチに及んだ。 「突然過ぎて何も考えられなかった」と振り返る原口さん。筋肉がしびれて立つことができず、病院に搬送された。一カ月半の大けがだった。通院時、傷跡に管を入れ、洗浄することもあった。 飼い主の女性は当時、自身で犬を連れ出していなかったが、犬が懐いていない80代の祖父に十分な注意点を伝えないまま散歩を任せていた。原口さんは部活に復帰できるくらいに回復したものの、今も傷跡が生々しく残る。通学や散歩でも利用される人通りの多い道。扱いに不慣れそうなおじいさんが、犬の散歩に不向きな場所に連れてきていたことに怒りが湧いたと当時の心境を振り返り、「部活にも行けず悔しかった」と漏らした。 ▽「危険は十分予見できた」飼い主は有罪に