なぜRIZINキックワンナイトTMで優勝を逃した皇治は引退を示唆したのか…バッティング批判に眼窩底骨折
皇治は、決勝戦が終わったリング上で「ごめんな」と白鳥にひとこと声をかけた。 「申し訳なかった。あの3人が上がってくれたから、こうして(トーナメントが)形になった。なのに自分が1回戦をふがいない形にして盛り上がりに欠けた」 トーナメント開催が決まって以来、皇治は白鳥を「天心のカバン持ち」だの「(RISEで)連敗したのを拾ってやった」だのと“口撃”し続けてきたが、その謝罪の意味もあったという。 「それぞれが盛り上げようとやってくれた。それに対し最後は戦いで見せなあかんかったのに見せられなかった。それを白鳥さんに伝えたかった」 だが、白鳥は「仲良しこよしをするつもりはない」と突き放し、ファイターらしく清々しいメッセージを送った。 「このまま引退しないでくださいね。ここから皇治選手がどうやって上がっていくのかが個人的に気になる。辞めるのは簡単。らしくない。もう一回(皇治と)やりたいという気持ちはないけれど」 9分間を戦った白鳥だからこそ、皇治の並々ならぬ思いが理解できたのかもしれなかった。 皇治のファンは、アンチと熱烈応援団がカオスとなって形成されているが、その皇治軍団と呼ばれるファンからも「引退」を不安視する声がネット上を飛び交った。 「ファンや白鳥からも引退を危ぶむ声があるが?」と皇治に質問をぶつける。 「強い選手はたくさんいる。一丁前のこと言ってやってきましたが、若い選手たちに盛り上げてもらえたらなと思っている。この年までできたのはみんなのおかげで感謝している」 言葉に含みがあった。 もう一度、単刀直入に「グローブを吊るす気か」と聞くと「それ(引退)もしっかり考えなあかんと思います」と引退を示唆。さらに「梅野がああなって、次、頑張るとか考えていない」と続けた。 現役時代の魔裟斗を担当した土居進トレーナーから課せられた「1日、ロープ登り100回、腹筋2000回」の過酷なノルマを守り、週4でハードなトレーニングに取り組んだ。「禁酒&禁遊び」もストイックに貫いた。あまりの激しさに、あるとき「魔裟斗さんの言っていることがわかった」とつぶやいたという。 K-1のカリスマが残した「とことんやって限界を超えると、わかることがある」との言葉だ。 それだけ追い込んからこそ白鳥の強打に耐え、最後まで前に出続けることができたのである。しかし、考えてみれば、たかだか4か月しかしていないのである。 「もう限界なのか」とも質問した。 皇治は、「いい練習はできた。限界を認めることも必要」と答えた。わかりやすいハッピーエンドのストーリーを歩まないのが皇治なのだろう。予期せぬ何かを起こす男もRIZINという“格闘玉手箱”には必要である。強さは証明できなかったが、群を抜くトラッシュトークを含め、プロのファイターとしての商品価値は、RIZIN3連敗でもなお健在である。榊原CEOも「最後の決断は本人。続けるべきだと思う。まだやり残したことがあると思う。完全燃焼には見受けられなかった」とエールを送り、ノーコンテストに終わった梅野とのリマッチをRIZINリングで実現したいという意向を明らかにした。 インタビュールームでの短い問答で皇治は、「受け入れたい」という言葉を何度も繰り返した。 「悲劇のヒロインぶっているわけじゃないけど、偉そうなことを言って受け入れなあかんことがたくさんある。批判はもちろん、いっぱい悔しいこともあった。絶対に自分ならできる、やらなあかんと必死にやってきた。すべてを見返すために頑張ってきた。人生は簡単じゃない。弱さを受け入れて人生を突き進む」 引退を示唆した皇治はどこへ突き進むのか。 インタビューを終えると皇治は病院に直行した。右目の眼窩底骨折が判明した。引退にしろ、再起にしろ、時間はかかる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)