なぜ中谷正義はロマチェンコに9回TKO負けし“世紀の番狂わせ”を起こすことができなかったのか
プロボクシングの元OPBF東洋太平洋ライト級王者でWBO世界同級5位の中谷正義(32、帝拳)が26日(日本時間27日)、米ネバダ州ラスベガスの「ヴァージン・ホテルズ・ラスベガス」で元3階級制覇王者で世界ライト級の3団体統一王者だったワシル・ロマチェンコ(33、ウクライナ)とノンタイトル12回戦で対戦し9ラウンド1分48秒にTKO負けを喫した。テクニックとスピードで上回るロマチェンコは中谷とのリーチ差を問題とせず左のストレート、右フックを着実にヒットし続け、5ラウンドに一度目のダウンを奪い、9ラウンドに連打をまとめて中谷が膝を着いたところでレフェリーがストップした。試合後、ロマチェンコは、昨年10月に敗れた4団体統一王者のテオフィモ・ロペス(23、米)とのリマッチを要求した。
元世界最強ボクサーの計算尽くされた左ストレートに苦しむ
「ハイテク」と呼ばれる元世界最強ファイターの壁は厚かった。 9ラウンド。両目が腫れダメージの激しい中谷は、ロマチェンコの猛攻撃を受ける。もう何発食らったかわからないようなノーモーションの左ストレートにぐらつく。それでも体を預けてクリンチに出てKOは拒否した。右フックの強打でいよいよ足元が定かでなくなり、混戦の連打で膝をついてしまったところでレフェリーが試合をストップした。 キャンバスに沈まなかったことはせめてもの中谷の意地だったか。 それでも立ち上がることができず、コーナー用の椅子が用意され、中谷は、そこに座りうなだれた。9ラウンドの間、ほぼ一方的に打たれたダメージの蓄積は相当なものだったのである。 ロマチェンコはコーナーに駆け上がって喜びを表現した。昨年10月にロペスに判定で敗れて以来、右肩手術を経ての復帰戦。ロマチェンコにとって、この勝利がいかに大きいかを示すシーンだった。 「勝ったことが嬉しい。チームに感謝している。私は目標を達成した。復帰を遂げました」 Tシャツに着替え場内インタビューに応じたロマチェンコは淡々と話した。 そして「戦略がうまくいき勝利につながった。戦略通りに戦えたことがよかった」と続けた。 ロマチェンコは世界最高峰のボクシング技術で中谷を寄せ付けなかった。序盤は、まだ中谷のリーチと体格差に戸惑い、ロマチェンコも簡単にはインサイドに入ることができず、1ラウンドにはバッティングで頭の毛の生え際あたりから流血するアクシデントもあった。 だが、ロマチェンコ陣営には、世界的カットマンのラス・アンバーが控えており「彼はプロ。いい仕事をしてくれた」(ロマチェンコ)と止血に成功。