<ラグビー>トップリーグ覇者 パナソニックのBK山田章仁の葛藤と進化
■山田を変えたエディ・ジョーンズの言葉 かねてから山田は、ボールタッチ数の増加を目指していた。スポットコーチとしてチームに定期的に加わるロビー・ディーンズ前オーストラリア代表ヘッドコーチ(HC)、日本代表のエディー・ジョーンズHCからは、それを叶えるための具体的な位置取りや意識付けを学んでいた。だからだろう。試合直後のミックスゾーン。大勢の前では、慎重に言葉を選ぶ28歳は、点差をひっくり返したあの場面を「あの場所にいられたのは、コーチのおかげだと思います」と振り返るのだった。 「トップリーグでは通用するけど、インターナショナルレベルでは通用しない」。ジャパンのジョーンズHCに断言されたのは、昨年4月の候補合宿でのことだった。前年度の山田はジョーンズHCの「サイズアップを」という要求を受け、80キロ台前半だった体重を88キロに増やしていた。社会人のアメリカンフットボール・Xリーグとの両立で話題を集めながら、本業でも「常にテレビ画面のなかに入るように」、と何度もパスを呼び込んだ。要は、ボールタッチ数を増やした。トップリーグのトライ王となった。それでも新たなシーズンに入ると、指揮官には「練習でのアグレッシブさが足りない」と断じられた。春の代表ツアーには参加できなかった。 ■山田「今までと一緒のことをしてもダメ」 変わろうとした。学生時代から注目を浴びながらも、手にできない初キャップの取得に向け、「いままでと一緒のことをしてもしょうがない。軸がぶれるのが、僕の軸ですから」。 たとえラグビーに対する考え方を変えても、そういう決断を下した自分の精神性は変わらない…。そう己を信じ、プレースタイルのマイナーチェンジに踏み切ったのだ。小倉高ー慶大ーホンダー三洋電機(現パナソニック)とキャリアを重ねるなか、「相手をかわす。誰にも触れられない」というスタンスを確立していた。それは自分が世界の大型選手に勝つために考えた、確固たる戦略だった。