<ラグビー>トップリーグ覇者 パナソニックのBK山田章仁の葛藤と進化
■サントリーの3連覇を阻止 山田章仁は、前髪とサイドと襟足を極端に刈り上げたベリーショートの髪型だった。「事あるごとに髪型はどうするんですか、と聞かれている。もう短くするしかなくて」。プロになりたての頃は、長髪を編み上げて芝の上を駆けていたものだ。「まぁ、皆さんの期待に応えたいな、と」。表彰式。即席の表彰台に並ぶ選手の群れから、その山田が一歩前に出た。 ■山田章仁はプレーオフMVPに 2014年2月11日、東京は秩父宮ラグビー場。日本最高峰であるトップリーグのプレーオフトーナメント決勝戦があり、パナソニックが2連覇中のサントリーを45-22で破った。三洋電機から名前を変えてから初めての王座奪還だ。リーグ戦では全チーム中2位の11トライを挙げたウイングの山田は、この日も2度、ゴールラインを割った。2010年度以来3季ぶりのプレーオフMVPに輝いた。 序盤、スコアを重ねたのはサントリーだった。 南アフリカ代表67キャップ(テストマッチ=国同士の真剣勝負への出場数)を誇るスクラムハーフ、フーリー・デュプレアが、大久保直弥監督の「ラック(ボール保持者が倒れた接点)の周辺にパナソニックの選手を寄せて、外のスペースでバックスのオプションを」という目論見を具現化。前半36分にはフランカーの佐々木隆道、フッカーの青木佑輔の順にフォワードを突っ込ませ、すぐさま右大外へ振った。フルバックの有賀剛がインゴールへ突入し、センターのニコラス ライアンもコンバージョンを成功させた。 16-19とビハインドを背負ったパナソニックだが、後半10分に逆転した。まずはオーストラリア代表51キャップのスタンドオフ、ベリック・バーンズが駆ける。中央突破。敵陣22メートルエリアでラックを作る。このチャンスに反応したのが、前半5分に先制していた山田だった。左大外の持ち場を離れ、サポートに走る。そのままラストパスを受け、歓声を浴びるのだった。ゴールも決まり、スコアは23-19なった。試合終盤は、完全にパナソニックのペースだった。