ベルトや下着の締め付けでじんましんができる訳 山梨大が仕組み解明
ベルトや下着の締め付けで皮膚が圧迫された部分にじんましんが起きる仕組みを、山梨大や京都薬科大などの研究チームが、ヒトの細胞やマウスの実験で解き明かした。IL―33という生理活性物質が深くかかわっており、この物質の働きを邪魔することで新しい治療法につながる可能性もあるという。研究成果が欧州の専門誌に発表された。 【写真】マウスのマスト細胞にIL―33を与える(写真下)と、与えなかった場合(写真上)に比べて、表面に圧力を感知するたんぱく質(緑色に発光)が多く出現した=中尾篤人・山梨大教授提供 皮膚の一部が赤く盛り上がり、かゆみを伴うじんましんは、皮膚に存在する免疫細胞のマスト細胞が何らかの刺激で活性化され、ヒスタミンなどの化学物質を出すことで生じる。日本では人口の0.5~1%が6週間以上続く慢性じんましんに悩んでいるとされる。 原因は食べ物や薬剤によるアレルギーのほか、ストレス、温度、光など様々だが、ベルトや下着による締め付けといった物理的な刺激で活性化される仕組みはよくわかっていなかった。 研究チームはアレルギー性の病気で増えるIL―33に注目。マウスやヒトのマスト細胞にIL―33を与えると、圧力を感知するたんぱく質をつくる仕組みが約20倍も強く働くことを発見。マスト細胞の表面に多く出現したこのたんぱく質に特殊な化合物で刺激を与えると、ヒスタミンなどが大量に放出された。 さらに、生きたマウスでIL―33と化合物を皮膚に注射したところ、皮膚が膨らみ炎症を起こした。背中をブラシで軽く刺激したところ、通常なら反応しないのに、マウスはかゆがる行動を示した。このマウスに抗ヒスタミン薬を与えると、かゆがる行動が抑制されたほか、マスト細胞がないマウスではかゆがる行動をそもそも示さなかった。 これらの結果から、IL―33がマスト細胞に作用すると、圧力を感知するたんぱく質が細胞表面に現れ、軽い物理的な刺激にもマスト細胞が反応してヒスタミンなどを放出し、かゆみや炎症が起きる、と研究チームは結論づけた。
朝日新聞社