メタプラネット、2025年にビットコイン保有10,000枚超を目指す──元ゴールドマン・トレーダーが経営指揮する日本企業の正体【2025年始特集】
株式と社債を発行してでもビットコインの購入を続けるメタプラネット。東京証券取引所に上場しているホテルの開発運営会社で、その名は国内外で徐々に知られるようになった。 暗号資産・支持派に転じたドナルド・トランプ氏が次期米国大統領に選ばれたことで、世界の暗号資産業界の関係者は北米の動向を注視する展開だ。同時に、時価総額で最大の暗号資産であるビットコインを買い増すメタプラネットに対しては、株式市場も注目する。 暗号資産市場に追い風が吹き始める中、メタプラネットは自らが定義づける「ビットコイン・トレジャリー企業(Bitcoin Treasury Company)」へといかに変わっていくのか?その経営を指揮するサイモン・ゲロヴィッチ氏とは何者か? 昨年2月、メタプラネットが開示した決算短信には「ビットコイン」の文字は一度たりとも出てこない。その約2カ月後の4月、同社はビットコインを資金管理戦略としての重要な準備資産に位置づけ、購入を開始すると宣言した。
ビットコインで株主の数は10倍増
「ビットコインは、価値の保存手段としてのグローバルな実用性を持つ唯一のデジタル準備通貨として際立っている」とゲロヴィッチ社長は述べ、メタプラネットの企業財務の基盤をビットコインに振り切る方針を固めた。 メタプラネットのビットコイン保有量は、6月末の141BTCから9月末には倍増。12月末時点には1,762BTCに増加し、現在の為替レート(記事執筆時点)で換算すると1億6,740万ドル(約262億円)となった。 ブラックロックやフィデリティを筆頭に、米国の大手資産運用会社がこぞってビットコインの現物に紐づく上場投資信託(ETF)を作り、昨年1月に米国の株式市場に上場させた。 これまで、一部の暗号資産愛好家で作られてきたビットコイン市場だったが、巨大な国際金融資本がファンドを通じて参入したことで、暗号資産にはまったく目もくれなかった機関投資家や個人投資家がビットコインETFを買い求めた。 ETFが売れれば売れるほど、それに紐づくビットコインの現物がファンドに組み入れられ、値を上げる。米国で上場されている11本のビットコインETFの運用残高は12月17日時点で、1200億ドル(約18兆円)に膨れあがった。 ビットコインの価格は昨年1年間で上昇を続け、11月には暗号資産を支持するトランプ氏が次期米国大統領に選ばれたことで、価格上昇をさらに勢いづけた。2009年に生まれた時は「紙くず」同然の価値だったビットコインは12月、1BTCあたり10万ドルの大台を超えた。 メタプラネットがビットコインを買い続けた同期間中、メタプラネットの株主数は約5,000人から10倍増の5万人を超えた、とゲロヴィッチ氏。2023年12月に1株160円近辺を彷徨っていたメタプラネットの株価は、1年後に3,500円を超えた。時価総額は1,200億円に達した。 日本では、国内の資産運用会社がビットコインETFの開発を模索しているものの、投資信託に関連する法律や、暗号資産取引に対する税法が足かせとなり、米国で起きた「ビットコインETFブーム」は当面の間、起こらないだろう。 しかし、ビットコインの保有量を増やし続ける国内企業の株式を購入することで、ビットコインの価格上昇がもたらすリターンを間接的に得ようと考える株式投資家は一定数存在する。 関連記事:ビットコイン規制はどう変わる―動き出した金融庁、ザワつく金融界と暗号資産業界