大学のキャンパス移転・再編が相次ぐ…その狙いは? そのひとつ関西学院大学の学長に聞いた
――神戸三田キャンパスの理工学部を21年に4学部に再編したことで、志願者が増えたことが大きいのではないですか。 それもあります。神戸三田キャンパスの志願者は再編以降に増え、24年度は総合政策学部を含めた5学部で1万7328人と、20年度の理工学部と総合政策学部を合わせた8744人からほぼ倍増しています。 ――関西学院大学は一時期、指定校推薦などの合格者が増え、一般入試が減ったことが批判の対象になりました。 私立大学の定員厳格化で指定校推薦の入学者が増えた時期がありましたが、20年度から一般入試の入試改革もあり、志願者数は増加しました。現在は一般選抜の入学者比率が54%になっており、推薦入学者が多数を占める状況はなくなっています。 ――国の入試改革を通じて知識偏重型の入試が批判され、最近は総合型選抜や学校推薦型選抜の年内入試が広がっています。一般選抜比率を高めた意図は何があるのでしょうか。 一般選抜か年内入試かということが論点になっていますが、本学は多様性、多種多様な入試制度でいろいろなバックグラウンドを持った生徒に入学してほしいと考えています。総合型選抜も受験者を多面的・総合的に評価する選抜として優れていますし、本学は高校での探究活動を評価する「探究評価型入試」を他大学に先駆けて実施しています。バランスを考慮して一般選抜の割合を引き上げたということです。 ――最近は幅広く学ぶことが求められていますが、関西学院大学は早くから副専攻や4年間で2つの学位を取得するマルチプル・ディグリー制度を取り入れています。 学生は基本的に所属学部の学びに加えて他学部の授業を履修できるようになっています。マルチプル・ディグリー制度(MD)は、本学が日本で初めて導入した画期的な制度で、例えば法学部の履修を3年で終えて商学部の学位も取るといったことができます。勉強が大変なのにもかかわらず、実際の修了者は複数分野専攻制(MS)を含めると毎年40~60人います。 ――これからの日本の大学に必要なことは何でしょうか。 国公私を問わず、教員、職員とも細分化された専門的な役割を担うことが求められると思います。例えば、私の場合は一教員から学長の立場になり、今は学生に直接教えることはなくなり、マネジメントに専念しています。教員とか職員といった単純な区分ではなく、教員であれば、研究のみで教育に携わらない教員とか、教育力だけで採用する教員とか、専門分化する必要があるかもしれません。新しい大学の姿を教員、職員がそれぞれ自らの課題として考えていかなければなりません。
プロフィール
森 康俊(もり・やすとし)/1967年生まれ、大阪府出身。大阪市立大学法学部卒。東京大学大学院社会学研究科修士課程修了、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。関西学院大学社会学部教授、同大先端社会研究所所長、社会学部長などを経て、2023年4月から現職。
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