大学のキャンパス移転・再編が相次ぐ…その狙いは? そのひとつ関西学院大学の学長に聞いた
学長インタビュー③(関西学院大学・森康俊学長)
大学のキャンパスを再編や移転する動きは、関東では中央大学や法政大学など様々な大学が取り組んでいます。そんな中、関西学院大学は、創立140周年に合わせた新キャンパスの開設や、既存キャンパスの整備を相次いで発表しました。2024年度の入試では志願者数がほぼ半世紀ぶりに5万人の大台を超えて、学生数も増加しています。今後はキャンパスや学部をどう再編しようとしているのか、入試戦略をどうとらえているのかなどを聞きました。
――関西学院大学は1995年に開設した神戸三田(さんだ)キャンパス(兵庫県三田市)をどう活用するかが長年の課題になっていました。2029年に新たに神戸市灘区に王子キャンパス(仮称)の開設を目指すことを、昨年に発表しています。キャンパスをどう再編しようと考えていますか。 三田の用地を取得する際は学内で議論がありました。慶應義塾大学が湘南藤沢キャンパス(SFC)を1990年に開設した流れもあり、西宮上ケ原キャンパス(兵庫県西宮市)の教員たちが新しく学際的教育を実現するフロンティアとして三田に打って出ようと、総合政策学部が開設されました。理学部も2001年に上ケ原から三田に移りました(翌年、理工学部に名称変更)。 近年は首都圏でもキャンパスの都心回帰の動きが強まり、受験生が大学を見る軸が変わっています。教育、研究に加えて、キャンパスへのアクセスや周辺のアメニティ(快適性)が求められるようになり、その点で神戸三田キャンパスは厳しい状況が続いていました。 そこで19年に神戸三田キャンパスのコンセプトとして「Be a Borderless Innovator ~境界を越える革新者たれ~」を定め、21年に理工学部を再編して、理学部、工学部、生命環境学部、建築学部を新設し、総合政策学部と合わせて5学部体制になりました。4月に記者発表しましたが、25年4月には、近接地に起業の拠点となるインキュベーション施設と学生寮(300人収容)、それにフィットネスジムのある商業施設を併設する「KSC Co-Creation Village【C-ビレッジ】」を開設します。欧米の大学のように24時間、研究に関われるようになり、また起業した卒業生たちを講師として招きます。 ――王子キャンパスを開設する狙いは何ですか。 神戸市灘区の王子公園周辺は、関西学院の創立の地です。神戸市が再整備計画の中で大学誘致を募ったことに対して、23年4月に学長就任後、前学長から引き継ぐ形で、応募しました。今年度中には、神戸市と土地譲渡契約を交わす予定です。 王子キャンパスを開設予定の29年は、関西学院創立140周年にあたります。新神戸駅からタクシーでワンメーターという、これまでにない地の利と環境に恵まれています。海外の研究者も来やすく、世界に開かれる大学に飛躍する機会をこのタイミングでもらったと受け止めています。 神戸三田キャンパス(5学部)をさらに発展させつつ、西宮市にある上ケ原キャンパス(8学部)と聖和キャンパス(1学部)、それに開学の地に新しくできる王子キャンパスとなります。