「天と地の差」「前に行ける気もしない」「突っ込むにもリスクが」【SF Mix Voices 第5戦もてぎ決勝(2)】
8月25日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで全日本スーパーフォーミュラ第5戦の決勝が行われ、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐が今季2勝目をあげた。 【写真】「まだ可能性はゼロではない」と王座獲得を目指す岩佐歩夢(TEAM MUGEN) ここでは決勝後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、ドライバーたちが決勝レースについて語った内容を2回に分けてお届けする。(前編はこちら) ■岩佐歩夢(TEAM MUGEN) 決勝7位 前日の予選では、Q1・Aグループで0.002秒という僅差で7番手となり、自身にとってSF初のQ1敗退を経験した岩佐歩夢。決勝レースは、前から7列目の13番グリッドからスタートを切り、6ポジションアップの7位完走となった。 この結果について岩佐は「ベストではないかなと。今日のペースを考えるとまだまだ上に行けたと思います」と悔しさを語る。 前戦富士で課題となっていたスタートについては、「完璧ではないにしろ、フィールド内で一番良いくらいの目立った蹴り出しと加速ができたと思います。富士の後、チームとコミュニケーションを取ってやり方を見直してきたので、その結果がすぐに現れたというのはTEAM MUGENの強さを感じました」と満足できるレベルに改善できたようだ。 ただ岩佐にとっては、ライバルに対してロングランのペースについてもポテンシャルを感じていたものの、バトルにおいてロスが生じてしまったことから自身の速さを発揮しきれなかったと感じているという。 なかでも「スタート直後の1~2コーナー、3コーナーでの位置取り」や、「ピットアウト直後に坪井選手(翔/VANTELIN TEAM TOM’S)に対して、仕掛けても前に出ることができなかったところ」を惜しい点として挙げた。 そのバトルについては、「トップスピードが他車に比べて劣る」ところがネックになったのではないか、と分析する。 「直線で置いていかれると、遠い距離からブレーキングで突っ込むにもリスクが出てくる、と感じながらのレースでした」 「展開づくりこそ良かったのですが、バトルでなかなか一発で仕留められずに、あれだけよかったペースを活かすことができなかったというのが課題です」 チャンピオンシップについては、トップの野尻智紀(TEAM MUGEN/58ポイント)と22.5ポイント差のランキング5位にダウンするかたちとなったが、「まだ可能性はゼロではない」と気を引き締め、残る富士、鈴鹿での4連勝を目標に掲げて諦めない姿勢を示した。 ■山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING) 決勝4位 地元栃木県出身で、昨年に続いて今年も母校である作新学院の生徒(小学部)の全生徒421名とその家族をレースに招待して臨んだ山本尚貴。 午前のフリー走行やレース前のウォームアップ走行では、「ペースにあまり自信がもてなかった」というが、迎えた午後の決勝は、後半に好ペースを発揮して表彰台目前の4位入賞を果たした。 「スタートはうまくいかず、小高選手(一斗/KONDO RACING)に抜かれてしまって。その後も序盤はペースが上がらなくて、福住選手(仁嶺/Kids com Team KCMG)にパスされてしまいました」 その後、前に行かれた2台についていく展開となり、結果として5番手の野尻智紀(TEAM MUGEN)までの先頭集団とは離れてしまい、21周目の終わりに前を行く福住と同時のピットインを選択。ここにはピット作業が課題となっているTeam KCMGにあえて合わせるという意図もあり、チームの目論見通りに前でコースに復帰した。 「ピットストップは、相手にプレッシャーをかける意味でもKCMGとタイミングを合わせました。チームは作業もうまく決めてくれたて、読み通りに前に出られました」 「その後の位置も良くて、前のクルマは早めにピットインした選手ばかりでしたが思ったよりもペースが落ちており、フレッシュなタイヤの自分とかなりペースの差があったので追い抜いていくことができました」 6番手スタートから一時は8番手までダウンしたなかで、最後には4位まで挽回するという強いレースを見せた山本。表彰台目前の4位は「トップ3とは天と地の差」と悔しさもあらわにするが、最後には充実した週末を過ごせたという実感を口にした。 「スタートの順番や、ここ数戦はあまり良いレースができていなかったことを考えると、久々にちゃんとレースができたなと思います。レース前にもここが踏ん張りどころだと思っていたなかでなんとか耐えられたので、これをきっかけに残りの4戦もなんとか頑張りたいなと思います」 ■小高一斗(KONDO RACING) 決勝8位 決勝を7番グリッドからスタートし、良い蹴り出しで6番手にポジションを上げた小高一斗。しかし、5周目以降から前を行く野尻に対してペースが落ち始めるなど、決勝は上位を走りながらも防戦の幕開けとなった。 「今週は走り出しからペースが遅かったのですが、日曜朝のフリー走行が悪くなかったので、『意外と戦えるんじゃないか』と思っていました」 「ですが、始まって5周以降はもう全然ペースが落ちてしまって。そこはちょうどチームとも話をしているところで、1セット目のペース改善は課題だなと感じていますね」 そこからは、ほぼミニマムのタイミングとなる10周目終わりにピットイン。そこから10周ほどは良いペースを維持し、24周目には5番手に立つ好走を見せた。 「タイヤ交換後の10周は良いペースで走ることができて、一瞬でしたが山下さんや野尻さんも見えてたので、『もう少しだな』というところを感じることができました」 「これまでは、一緒に走ることすらできなかったレースもありましたが、なんとなく戦えるようになってきたと思います。今回も後半はきつかったですが、それでもギリギリ耐えるレースができて、きついながらもポイントを獲れるようになりました」 これまでよりも戦えた実感を口にする小高。チームメイトの山下健太(KONDO RACING)も、予選最速に決勝2位表彰台獲得と開幕戦鈴鹿に続く好成績を収めており、僚友の活躍は彼にとってもチーム全体での上昇傾向が現われていると感じている。 「今年はこれまで毎戦良くなってきていて、今回は3号車も良い結果が出たので良いデータも獲れたと思います」 「自分も、今週の走り出しが17番手だったところから予選でQ1を通って、上位の選手に対してコンマ数秒差のところが見えました」 「自分でどうにかできるところもまだありますし、『あと少しというところにきたな』と感じています。強いチームになるためのきっかけになるレースになりましたし、次はさらに強くなって富士を戦えるのかなと思います」 ■三宅淳詞(ThreeBond Racing) 決勝20位 土曜フリー走行、予選の時点から苦戦模様が見られた三宅淳詞(ThreeBond Racing)は、最高尾の21番グリッドからスタートし、良い位置取りでオープニングラップの間に4台をパス。 このままの勢いで追い上げる展開が期待されたが、1周目の90度コーナーで大嶋和也(docomo business ROOKIE)との接触によりスピンしてしまい、リヤタイヤのパンクのために早々にピットインを余儀なくされる悔しい展開となった。 接触したときの状況について、「ヘアピンで僕が出遅れてしまった時点で、並びかけてくるのは分かって、インから来るのも感じていました」と振り返る。 「個人的には、1車身程度空けているつもりでした。ですがミラーからも見えない位置でしたし、審査員の判断もレーシングアクシデントだったので、どちらが悪いということもなく、仕方ないのかなと。」 「ああいうところを走っていれば接触もツキモノ」とも表現する三宅だが、今季はまだ下位に沈むシーンが多い印象もあり、中団以上を走れずにいることに悩んでいる様子だ。 「予選で前に行かないと、今回みたいに接触のリスクも上がりますけど、このまま富士に行っても予選で前に行ける気もしないんですよね」 「今季はずっと予選でのピークも出せず、ドライビングもマシンもキマらずといった感じです。そこの原因を見つけたいのですが、どのサーキットでも似たようなバランスの悪さを引きずってしまっている感じですね」 「チームはもちろんいい作業をしてくれていますし、エンジニアさんも夜までセットを考えてくれていて、僕もドライビングを改善しようとしているのになかなか結果に繋がらない。なのでこれからは、アプローチの仕方を変えないといけないのかなとも思いますし、次こそは走り出しから手ごたえを掴めるように準備していきたいですね」とスーパーフォーミュラの難しさに対峙しながら、それでもなんとか這い上がらねばという下位脱出の意志を語った。 [オートスポーツweb 2024年08月26日]