三菱一号館美術館が11月に再開館。リニューアルオープン後初の展覧会は「再開館記念『不在』ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」
ソフィ・カル
ソフィ・カルは、自伝的作品をまとめた《本当の話》(1994)、自身の失恋体験による痛みとその治癒を主題とした《限局性激痛》(1999)など、テキストや写真、映像を組み合わせた作品を生み出してきた。自分自身や他者とのつながりをモチーフに、現実と虚構のはざまを行き交う大胆で奇抜な制作は、常に驚きに満ちており、見る者の心に強い印象を残す。 本展では、ソフィ・カルの作品に通底する「不在」をテーマに、作家自身や家族の死にまつわる「自伝」や、テキストを刺繍した布をめくると写真が現れる「なぜなら」など、テキストと写真を融合した手法で構成されたシリーズを紹介する。また、美術館における絵画の盗難に端を発したシリーズ「あなたには何がみえますか」や、ピカソ(作品)の不在を示す「監禁されたピカソ」、映像作品《海を見る》など、ソフィ・カルの多様な創作活動が紹介される。 見どころは、ソフィ・カルによる《グラン・ブーケ》。2010年に三菱一号館美術館が収蔵した19世紀末フランスの画家オディロン・ルドンによるパステル画の代表作《グラン・ブーケ(大きな花束)》は、限られた期間しか公開されず、通常は展示室内の壁の裏側で保管される。ソフィ・カルはこの作品の「不在」に着想を得て、自らの《グラン・ブーケ》を完成させた。 トゥールーズ=ロートレックも彼が描いた人々も「不在」となり、いまでは作品のみが「存在」している。ソフィ・カルから投げかけられた「不在」という主題を通して、美術館や作品そのものの「存在」について考えたい。
Art Beat News