細い糸状コラーゲンを高速でつくる技術を開発 人工腱への応用に期待 北大など
具体的には、紡糸用コラーゲン水溶液を直径47マイクロメートル(1マイクロは1000分の1ミリ)でエタノール浴に押し出し、押し出すよりも4.4倍の速さで巻き取ることで延伸。紡糸速度は1時間に200メートルまで上がり、直径が10~20マイクロメートルの生体内コラーゲン繊維に近い22マイクロメートルの糸状コラーゲンが得られた。この結果、糸状コラーゲンの連続生産が可能になった。ただ、実際の靱帯や腱のコラーゲン繊維の断面が真円であるのとは違い、得られた糸状コラーゲンの断面は楕円形となった。延伸時にローラーから圧力を受けた影響とみられる。
断面が楕円形の糸状コラーゲンが、医療現場で人工腱として使うことができるか調べるため、硬さを弾性率、丈夫さを破断強度で確認した。数百本を束にしたテスト人工腱をつくり、引っ張り試験を行うと、弾性率はヒトの膝前十字靱帯とくらべて約2分の1、破断強度は約3分の1となった。比較した膝前十字靱帯は健常なヒトのもので、手術で別の場所の腱を移植した直後は弾性率も破断強度も弱いことから、臨床応用にとっては十分な強度といえるという。また、束にする糸状コラーゲンの量を増やして太い束にすれば強度を上げることができる。
今後は、細い糸状コラーゲンの断面を楕円形から真円にしたり、束の作り方を工夫したりするなど、実際の腱や靱帯に近づける開発も進める。その上で実用化に向けて、最短で5、6年の内に人への臨床試験を開始し、10年後に治験を行うことを目指している。
研究は、北海道大学と新田ゼラチンが共同で行った。成果は、生体材料の専門誌「バイオメディカル マテリアルズ」電子版に5月21日に公開され、北海道大学が7月4日にプレスリリースを出した。