「女脳」「男脳」はなぜ間違っているのか…女性と男性の「性差」についての意外な事実
性差より個人差のほうがよほど大きい
ここまで、心的回転と言語能力に性差があるという話を紹介しました。こういう話を聞くと、結局性差はある、女性と男性の能力は異なる、と思えるかもしれませんので、もう1つ重要な点について触れておきましょう。 先に、個々の事例ではなく、平均的な傾向を見ることが大事だと述べました。これは、全体的な傾向として性差があるかどうかを見るために必要なことです。とはいえ、平均的な傾向として性差があればそれでおしまいというわけではありません。 というのも、平均的に男性が心的回転に優れる、女性が言語能力に優れるからといって、すべての男性が心的回転に優れるわけではありませんし、すべての女性が言語能力に優れるわけではないからです。 たとえば、筆者は男性ですが、心的回転が得意ではありません。2次元についてはまだしも、3次元の空間になると思考停止に陥ります。数学の立体図形でも、少し難しい課題になると頭の中で回転することができなくなってしまい、本当に苦労しました。そのこともあってか、かなりの方向音痴です。国外に出張すると、ホテルにたどり着くのに非常に苦労してしまいます。タクシーを使えばいいのですが、公共交通機関に乗るのが好きなこともあり、駅から5分のホテルに着くまでに30分かかってしまうこともよくありますGoogle Mapを使っても、最初の一歩でなぜか逆方向に行ってしまいます。 同様に、女性でも、言語能力の成績がいい人もいれば、そうではない人もいます。女性だからといって、全員がそうではないというわけです。 つまり、ここで言いたいのは、平均的に性差があるからといってすべての人に当てはまるわけではなく、それ以上に個人差のほうが大きい場合があるということです。ある人が心的回転や言語能力に優れるかどうかは、性別によって決まる部分はごくわずかであり、それ以上に個人差のほうが大きいということになります。 本書でこれ以降も性差があるという話をしていきますが、この点は常に頭の片隅に置いておいてください。