考察『光る君へ』45話 笠を脱ぎ捨て、海風を受けて駆けるまひろ(吉高由里子)そして大宰府で周明(松下洸平)と出会う!終盤にきて怒涛の展開の予感
『源氏物語』完結
まひろが筆を走らせる。彼女の傍らにあるのは『往生要集』、『大乗本生心地観経』。仏教書と経典である。『源氏物語』「宇治十帖」は仏教思想が色濃く反映された内容なので、執筆中のまひろの手元にこれらが揃っているのは納得だ。 まひろ「小君がいつ戻るのかと、お待ちなされていたのですが……(略)『誰かに隠し置かれているのではないだろうか』と思い込んでしまわれたのは、自ら浮舟を捨て置いたことがおありになったからとか。元の本には書いてあったのです」 『源氏物語』54帖「夢浮橋」の結びだ。 光源氏の息子(実は柏木と女三宮の不義の子)薫と光源氏の孫・匂宮、ふたりの貴公子に翻弄された女──浮舟は、浮舟は、苦しみの末に宇治川に入水し、自ら命を絶とうとした。亡骸は見つからぬままで薫は嘆き悲しむが、実は浮舟は入水後に横川の僧都に助けられていたのだ。死にきれなかった彼女は僧都に請い願い、出家を果たす。薫は浮舟が生きていることを知り、再び邸宅に迎え入れようとするも、浮舟に拒絶される。薫はあきらめきれず、浮舟の異父弟・小君を遣わして還俗と復縁を促すが、それも拒否される。小君は、浮舟と思われる女性とは直接話せず、手紙も渡せなかったと知って薫は落胆し(誰かが浮舟を隠しているのではないか……)と思い込んだ。 それは、自分が浮舟を宇治の別邸に隠して住まわせた挙句、飼い殺しのようにした経験からではないだろうかと「本に侍める(元の本には書いてあったのです)」。 まひろは筆を置き「物語は、これまで」と天を仰ぐ──。『源氏物語』が、宇治十帖まで完結した! 全部で54帖、登場人物は430人以上。作品内の和歌は795首。 光源氏とその子孫たちを中心として、人間の愛と別れ、幸せと喜びと悩みと苦しみ。それらすべてを描いた壮大な大河小説を、ついに完成させた……やり遂げたのだ。 独り、まひろは月を見上げる。その夜は上弦の月。まだ満ちきってはいない、これから輝きを増すのだ。
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