KDDIの「AIドローン構想」が示した警察支援の可能性,ローソン拠点から10分以内対応の新モデルを提案。
KDDIは石川県七尾市で、警察活動支援のためにAIドローンを活用する実証実験を2024年12月に行った。行方不明者の捜索や交通事故現場の確認まで、警察業務の高度化に向けた新たな試みだ。コンビニエンスストアをドローンの発着拠点とすることで、緊急時の初動対応を10分以内で可能にするという。取り組みの現場から、その可能性を探った。 【写真で見る】警察署の隣にあるローソンからドローンが発着する様子 ■「地域防災コンビニ」のモデルケース構築 能登半島地震、奥能登豪雨と続く災害の経験は、KDDIの構想を加速させた。石川県との包括連携協定締結を実施し、同社は「地域防災コンビニ」のモデルケース構築に着手。12月23日の実証実験は、その第一歩となった。
KDDIの松田浩路取締役執行役員常務・CDOは「災害時のためだけに予算は組めない。日常から活用できる仕組みが重要」と指摘する。同社が「フェーズフリー」と呼ぶ、平時と災害時を区別しない考え方だ。ここに、通信技術を活用した新しい地域インフラ構築の方向性が見える。 ■実証実験の全容 12月23日の実証実験は、七尾警察署の会議室および隣接するローソン七尾小島町店を拠点として実施された。同店舗の屋上に設置された金属パイプ製のやぐらがドローンの離発着場所となり、2つのシナリオで警察活動の高度化に向けた実証が行われた。
実験は警察の通信指令室からの模擬通報から始まった。「七尾市内の小丸山城址公園付近で25歳男性が行方不明。午前9時頃から散歩に出たまま帰宅せず。黒色ジャンパー、紺色長ズボン、白色スニーカーを着用」──。この通報を受け、1つ目のシナリオが動き出した。 ローソン七尾小島町店の屋上から約1km離れた小丸山城址公園に向け、AIドローンが飛行を開始する。警察署内では、操縦者の画面と現場のライブカメラ映像を映す2つのモニターで状況を確認。サーマルカメラを活用した上空からの捜索により、行方不明者を発見し、警察官への正確な位置情報の伝達まで完了した。