KDDIの「AIドローン構想」が示した警察支援の可能性,ローソン拠点から10分以内対応の新モデルを提案。
続く2つ目のシナリオは、より遠距離での実証となった。「能登島大橋駐車場先の路上で2台の車両が正面衝突。両運転者が意識不明」という通報に基づき、店舗から約5.1km離れた現場へドローンが急行。七尾湾上空を直線的に飛行することで、車両では湾岸を迂回して15分を要する距離を、わずか8分で到達した。 現場では、250m先のナンバープレートまで確認できる高精細カメラを活用し、車両の破損状況や乗員の様子を詳細に確認。「運転席の乗員が動いていないようです」「後部座席に1名確認できます」といった具合に、オペレーターと警察官の間で具体的な状況確認が交わされた。さらに3Dスキャンによる現場の立体的な記録まで実施。事故状況の詳細な把握を可能にした。
ドローンの飛行は全て警察署からの遠隔操作で行われ、現場の状況に応じて通常カメラとサーマルカメラを使い分けることで、臨機応変な対応を実現した。小雨が降る悪天候の中での実証となったが、防水性能を備えたドローンは正常に機能を果たした。 ■Skydio X10による国内初のレベル3.5飛行 今回の実証実験には、いくつかの重要な要素が組み込まれている。 まず、レベル3.5飛行(無人地帯での飛行)という新しい制度下での実施だ。2023年12月の航空法改正で新設されたこの制度では、条件を満たせば立入管理措置が不要となる。Skydio X10による国内初のレベル3.5飛行となった今回の実証は、制度面での一つのマイルストーンとも言える。なお、緊急時の捜索救助目的であれば、航空法の特例措置により即時の飛行も可能だ。
また、今回はモバイル通信を活用した遠隔での無人監視飛行を実現。Skydio X10は同社のドローンとして初めてのモバイル通信対応となる。au網を活用することで、地上と同様のエリアで高度150mまでの運用が可能で、この実力が示された格好だ。 ただし、実証実験中にはいくつかの技術的課題も浮き彫りになった。事前のリハーサルでは問題なく飛行できていたものの、本番ではモバイル通信のトラフィック状況により一時的な遅延が発生。また、2機目のドローンで接続トラブルが発生し、機体の電源再投入による対応が必要となった。KDDIスマートドローンの博野雅文社長は「実運用に向けては、通信の安定性をさらに高める必要がある」と課題を認識している。