はやぶさ2が挑む「世界初」人工クレーター生成実験とは?
岩石の破片が紙吹雪のように舞い上がる
タッチダウン直後に小型モニターカメラ(CAM-H)で撮影された画像を見ると、地表の物質を採取するサンプラホーンの周辺からリュウグウの岩石の破片や砂が噴出する様子が確認できます。これは、はやぶさ2から発射された重さ5グラムの弾丸によって引き起こされたもののようです。 着地の後、はやぶさ2が上昇に転じてからも、大量の岩石の破片や砂がリュウグウ上空へと舞い上がる様子が見られます。これらの破片は、弾丸だけでなくはやぶさ2が上昇するために噴出したスラスターの影響によって、上空に巻き上げられたと考えられています。プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎さんは、その様子を「成功を祝う紙吹雪のよう」と表現しました。 リュウグウに到着して以降、はやぶさ2の探査は、基本的に外側からリュウグウを観測するだけでした。それでも、リュウグウ全体の密度が平均で1立方センチあたり1.2グラムと、水とそれほど変わらない軽い天体であることが分かってきました。この数字は、リュウグウが小惑星のかけらが集まってできた「ラブルパイル天体」であることを物語るものです。 しかも、近赤外線観測の結果から、リュウグウには水を含む含水鉱物(がんすいこうぶつ)が存在することが明らかになってきました。はやぶさ2がリュウグウのかけら(サンプル)を地球に持ち帰り、詳しい分析がなされることで、初期太陽系の状況や地球に水がもたらされた理由が詳しく分かってくることでしょう。 タッチダウンは、はやぶさ2にとって初めて経験したリュウグウとの“接触”でした。リュウグウにわずか5グラムの弾丸を撃ちこんだだけで、地表から無数の岩石の破片が飛び出し、空高く舞い上がったのです。このことから、リュウグウの岩石が、見た目よりも脆(もろ)い物質であることがうかがえます。密度とあわせて考えると、軽石のようなものなのかもしれません。 さらに、後日、はやぶさ2の着地点を検証してみると、予定していたL08-E1領域の半径3メートルの円内に見事に着地していました。誘導精度は1メートルと、円の中心からわずか1メートルしか離れていない地表にサンプラホーンをタッチさせることに成功したのです。はやぶさ2が地球に帰還してカプセルが届くまでは、実際にサンプルが採取できているかどうかは断言できませんが、状況証拠から判断する限りでは、今回のタッチダウンだけで、運用チームが目標としていた0.1グラムのサンプルを採取できたはずです。まさに、完璧な運用でした。