池井戸潤、小説はエンターテインメント「不正や理不尽さ訴えるつもりはない」
池井戸潤氏といえばエンターテインメント小説の第一人者で、元銀行員の経験が活かされた「半沢直樹」など数々のテレビドラマの原作で知られるヒットメーカーだ。意外だが、映画化は今回の「空飛ぶタイヤ」(本木克英監督、15日公開)が初めてだという。主演はTOKIOの長瀬智也。大型トレーラーの脱輪事故をめぐり、トレーラーを所有する運送会社の社長・赤松(長瀬)がトレーラーの製造元である大企業・ホープ自動車に立ち向かう。娯楽作として最初から最後までテンポのいい展開で興味を惹きつけられるが、池井戸氏に初映画化に際しての心境などを聞いた。 TOKIO・長瀬智也、中小企業の社長役を熱く演じる 映画『空飛ぶタイヤ』
初めての映画化 キャスティングなどについて口出しはしない
「今までも、いろいろ映画の話はあったんです。ところが、いろいろな理由でなかなかOKが出せなかった。今回は、これはもう問題のない良いシナリオだと思って初めてOKしまして、初映画化ということになりました」 自ら小説に描いた登場人物が映画館の大きなスクリーンで躍動するわけだが、演じる役者についてはどのような感想を持っているのだろうか。 「長瀬さんの役は、原作を書いているときはここまでカッコいい人物ではなかったですね。僕の小説って、あまり外見については描いていないので、どなたが演じてもそんなに違和感はないと思いますけど。でもやっぱり長瀬さんの演技は、運送会社の経営者としてまったく違和感ないと思いますね」
巨大な自動車メーカーに比べ、吹けば飛ぶような小さな運送会社の社長である赤松を熱演する長瀬だが、その芝居は原作者のお墨付きというわけだ。ではキャスティングに関して、池井戸氏が自身のイメージを提案することはあるのだろうか。 「映像作品は、監督がイメージを膨らませて、このシーンはこう撮るとか、いろいろ撮影プランを育みながら『この人でいきたいです』と言ってくるものですよね。だから、僕はこの役者さんが好きだから使ってください、というのはちょっと言えないですね。映画もそうですが、映像化の世界で原作者というのは実は枠外、たとえてみれば中2階にいるようなものなんです。映像の賞にも、脚本賞はあっても原作賞ってないですよね。だからもう、スタッフの外なんです。その立場でキャスティングに口を出すってことは控えてます」