ネイマールがやって来る!6.6国立で森保Jと対戦するブラジル代表がベスト布陣で来日する背景と“ガチ勝負“の意義
カタール大会ではともにワールドカップ優勝経験のあるFIFAランキング7位のスペイン、12位のドイツ両代表とグループEで顔を合わせる。強化マッチを組んでいく上で、ネーションズリーグが開催されるヨーロッパ勢との対戦が不可能な状況下で、ブラジルはランキング上位国と強豪国の両方を最高のレベルで満たしている。 「われわれはワールドカップのベスト8以上という目標を掲げて活動してきました。世界の舞台で勝つために、これまで取り組んできたいい部分、続けていく部分、上げていかなければいけない部分、改善しなければいけない部分が、世界トップのブラジルと戦うことで整理されると思いますし、その上でレベルアップできると感じています」 ブラジル戦の意義を森保監督はこう語っていた。加えて、あくまでも現時点での話ながら、ベストメンバーが招集された。しかも、ソウルで韓国と戦ってからの来日となるだけに、ブラジルの選手たちは時差ぼけもほぼ解消されている。改修後の国立競技場で初めて試合に臨む日本にとって、たとえ完敗してもメリットだらけの一戦となる。 一方のブラジルにとってはどうか。実は韓国、日本との連戦が発表された4月下旬に、ファンやメディアから「何の意味があるのか」とマッチメークが批判されていた。言うまでもなく、韓国や日本との実力差が俎上にあげられた。 ワールドカップ予選や宿敵アルゼンチンとの国際親善試合を除けば、ブラジル国内での国際親善試合は原則年1回に限られている。他はすべてアウェイもしくは中立地での開催となり、CBFはマッチメークをイギリスのマネジメント会社に委託している。 国際親善試合をアウェイや中立地で行うのは、対戦する各国サッカー協会などから莫大な出場料を得るためだ。カタール大会の組み合わせが決まった4月1日の直後から交渉が開始された今回のマッチメークに関して、JFAはマネジメント会社を通じて3億円(推定)をCBFへ支払ったとされる。韓国戦においても、おそらく事情は変わらない。 そして、CBFとマネジメント会社の間では、国際親善試合にはその時点におけるベストメンバーを招集する契約が交わされているとされる。 もちろんお金のためだけに、ブラジルもアジアを転戦するわけではない。 カタール大会までにマッチメークできる強化試合をめぐる状況は、日本もブラジルも変わらない。9月の国際Aマッチデー期間を含めて最大で6試合しか戦えず、もちろんヨーロッパ勢とのマッチメークも不可能だ。アフリカサッカー連盟も北中米カリブ海サッカー連盟も、6月の国際Aマッチデー期間から大陸内の公式戦をスタートさせる。 選択肢が極めて限られる状況で、ともにカタール大会へ出場する韓国、そして日本にともにベストメンバーで臨む。批判を浴びた連戦は、歴代最多の5度目の優勝を果たした2002年の日韓共催大会を最後に、自国開催だった2014年を含めて、実に4大会連続で遠ざかっているワールドカップを手にする上でも貴重な調整の機会となる。 当初の予定では6月11日に、中立地となるオーストラリアのメルボルンでアルゼンチン戦が組まれていた。ブラジルとしては韓国から日本、オーストラリアとアジアを回るツアーを思い描いていたが、ここにきてアルゼンチン戦が中止となった。 しかし、最大4試合を組める6月シリーズをむざむざ無駄にするわけにはいかない。CBFはマネジメント会社を通じて、6月シリーズの後半に中立地ヨーロッパを舞台に、アフリカの代表チームを招へいするマッチメークを急いでいる。 アフリカもネーションズカップ予選が開催されるが、6月は各国とも2試合を戦うだけで、国際親善試合を2つ組み入れられる。この状況を生かし、日本もカタール大会に出場するガーナ、チュニジア両代表を6月シリーズ後半の国際親善試合へ招へいした。 いずれにしても、ブラジルがカタール大会制覇を見すえながら、本気モードで来日する状況は変わらない。過去の対戦成績は2分け10敗。得点5に対して失点34と力の差を見せつけられ、特にネイマールには4試合連続8ゴールを喫している。サッカー王国が本物の牙をむいてくる90分間を、日本代表に関わる全員が心待ちにしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)