アマゾンの怪魚ピラルクーはセビーチェが絶品。ブラジル流ブイヤベースも美味いぞ!
アマゾン川に住む体長4.5mにもなる世界最大級の淡水魚「ピラルクー」。さて、その味は? 日本を代表する植物生態学者・湯本貴和さんが世界各地で出会った「野生の食材」を紹介する連載がスタート! 初回はアマゾン川の巨大淡水魚の魅力をお届けします。湯本さんがアマゾン川中流域の都市マナウスを歩いて出会った、ピラルクーの一品料理。それはアマゾンの豊穣なる野生と多民族国家ブラジルならではの知恵が合わさって成立した、奇跡的な一皿でした。 【写真7枚】ピラルクーの生食料理「セビーチェ」はカワハギの薄造りのよう。世界最大級の淡水魚を使った料理を写真で見る
ピラニアから古代魚まで!アマゾン川は淡水魚の宝庫
世界最大の熱帯雨林であるアマゾン。長さは約6,800kmでナイル川と世界一を競い、支流はブラジル、ベネズエラなど9カ国にまたがって、流域面積はおよそ705万平方キロメートルと世界最大。そのうち550万平方キロメートルが熱帯雨林である。 これらの大河は、いうまでもなく淡水魚の宝庫である。アマゾン川やオリノコ川など南米の河川には、まだ記載されていない新種の魚はたくさん生息しているが、少なくとも2,500種以上の淡水魚が住んでいる。 そのうち1,000種は有名なピラニアを含むカラシン類、さらに1,000種はナマズ類である。ブラジル・アマゾネス州の中心都市であるマナウスの魚市場には、目を見張るほどに多様な魚たちが並んでいる。 ピラルクー(Arapaima gigas)やシルバーアロワナ(Osteoglossum bicirrhosum)など1億年の間、ほとんど姿が変わっていない「古代魚」と呼ばれる巨魚もたくさん売られている。生きた個体なら観賞用としていくらで取り引されるのだろうと下衆な考えが頭をよぎる。
マナウスの市場では「古代魚」も人気食材なのだ
野生のピラルクーは、昔は弓矢、現在はおもには刺し網で捕獲されるが、腐るのが遅いことでも有名だ。熱帯の気候下で、生でも丸1日は大丈夫という。 マナウスの魚市場では、生のピラルクーを三枚におろして切り身にしたものだけではなく、生干しされた三枚おろしのピラルクーや、それをロールに巻いて縛ったものが売られていて、冷蔵設備がない場所にでも輸送できる魚として重宝されている。 白身のしっかりとした肉質で、フライでもムニエルでもとてもおいしい。ピラルクーの頭部もたまに市場に並んでいて、煮るとコラーゲンたっぷりのスープができるそうだ。