植物性で「肉を食った!」と思わせる素材を開発せよ
齋藤:そうですね。そこの両立は難しいけれど、可能になればビジネスとしても大きなインパクトがあります。一方で世界の人口が100億人に迫っていく勢いですから、動物性の素材だけをメインディッシュにした食生活をこのまま維持するのは難しい。 はい。 齋藤:動物性を植物性に切り替えよう、ということは、世界的な医学雑誌の「ランセット」などの学術的な世界で提唱されています(※1)。ところが、じゃあ実際に足元で、ヴィーガン(ビーガン)の人がどれだけいるのかというと、世界中の3%なんですね(※2)。 ※1 Willett, Walter, et al.:The lancet,393,(10170)、447-492(2019) ※2 Ipsos MORI, An exploration into diets around the world. Ver. 1, 2018. 3%ですか。でも個人的には納得できるな。 ●食った!という「満足感」は何からくるのだろう 齋藤:ですよね、だって、そういう製品を開発しようとしている不二製油の我々も、肉、大好きですから。 自分も大好きです(笑)。 齋藤:結局のところ、植物性素材になくて、動物性にある「おいしさ」とは何か、これを解明せねばならない。そうすれば、動物性の素材が与えてくれる満足感を、植物性でも実現できる道が開ける。 ですが、「おいしさ」という概念は一筋縄ではいかない。だって「おいしさは、同じ食べ物でも誰と食べるかによって違うんだよ」と、普通に言われちゃいますからね。 情緒としてはその通りですけれど、研究者としては途方に暮れますね。 齋藤:そこで我々が見いだしたのが、「満足感」というキーワードなんです。 満足感。 齋藤:当初は皆さんに突っ込まれてなかなか通じなかったんですが、僕も様々な方々にプレゼンを繰り返すうちに、だんだん自分の中で腑(ふ)に落ちてきまして。 おっ、では、説得してみてください。「満足感」って何でしょう。おいしさとの違いは。 (次回に続きます。明日、このコラムでお待ちしています)
山中 浩之