植物性で「肉を食った!」と思わせる素材を開発せよ
齋藤:混成チームが暗中模索でおいしさを考えていった結果、かっこよく言えば、共創とか、創発という、まさに「共」に「創る」ことで、新しい発見にたどり着きました。そこから事業に向けた動きになって、開発を進めて今もどんどん世界が広がっているところです。 いけそうだ、と思ったのはいつ頃ですか。 齋藤:手がかりをつかんだのは、19年ですね。たまたま「満足感」、それも「動物性食品を食べた時に感じる特有の満足感」の、ベースになるものが生まれて、どうやら油脂とたん白でこれをつくれそうだな、というところから発想を広げていって、最初は豚骨風味、そしてビーフ風味、チキン風味、今は魚介系のかつおだし風味も製品化しているんです。 ええと……動物性の満足感というのは。 齋藤:これは我々独自の定義です。動物性食品を食べた時に感じる特有の満足感なんていう概念は、これまでないものです(笑)。 あ、やっぱり。 ●まっさらの更地に概念の柱を 齋藤:まっさらの更地の上に、誰も考えたことがない概念の柱を立てて、それを家というか建築物にしていくような、何かもうわけの分からないことをやっているので、実はご説明しても理解に苦しまれることが多々ありました。 そういうことをやっているんですね。自分に理解できるかな。 齋藤:ただ、概念と言いましたが、現在は確実に物ができているので、今日は実際に我々が考えた概念を試食して体感していただきながら、お話しできたらなと思ってます。 おいしさの概念を、油脂とたんぱく質でつくることに成功されて、今日はここでそれを体感できる、ということですね。 齋藤:そうです。そもそも不二製油は油脂とたん白の会社で、その分野の研究員もすごくたくさんいる。これをベースに「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」というのが、この開発の先に見ている弊社のビジョンなんです。 でも、例によって「これを具現化するとなると何をしたらいいんだろう」というところがありまして。「おいしさと健康って別々じゃないぞ」と、上司からも常日ごろ言われていたんですけど、僕は分からなかったんですよ。大豆たん白が健康にいいのは分かりますけど、チョコレートなどのおいしさとは別のところにいましたから。だから、理解しようともがきつつも、心の底では「これは無理だろう」と思っていました(笑)。 むちゃだと。 齋藤:言うのは簡単だけど、それはなかなか難しいですよと。 そうですよね。 齋藤:おいしいものって、食べ過ぎると体によくないという風潮があって。脂っこいステーキ、ラーメンを食べ続けたりとか、甘いシュークリームを思いっ切り食べたりしたいけれど、なんでもそうですが食べ過ぎは良くないですよね。一方で、体にいいものって……。 苦かったり味が薄かったり、あまりおいしくない印象がありますね。 齋藤:でもそれって、人類の進化の過程で考えたらおかしいですよね。おいしいから食べて、それが体にいいよとなりそうなのに。現代の人間の食生活は、どこかでズレてしまっている。そこを、植物性素材を使って、おいしさと健康を一緒のものにしたいなと。 二律背反だと思われている「おいしさ」と「健康」を、植物性素材とつなげることで両立できるんじゃないか、ということですね。