植物性で「肉を食った!」と思わせる素材を開発せよ
広報Oさん:あ、Yさん、誤解しないでくださいね。不二製油においしさという概念がないわけじゃ決してないんですよ。 いや分かります、それはそうでしょう。 広報Oさん:最近は「おいしさにこだわった」大豆ミートを発売するなど、時代の変化に合わせた対応もしているんですよ。 齋藤:ですね。ただ私が大豆たん白素材の開発をしていた当時は、いかに「飲みやすくする、溶けやすくする」かが、ことプロテインに関しては開発のテーマだったんです。その当時はいわゆる健康食品としてのおいしさを考えていて、社会一般的なおいしさまでは視界に入っていなかった。 そうすると、例えばどういうことがテーマになるんですか? 齋藤:例えば「大豆のにおいが出すぎていると飲みにくいので、どうやってマスキングしようか」みたいな発想ですね。「おいしくして晩ご飯のメインディッシュに出そう」みたいなことは、もう恐れ多くて考えもつかないところにいたんです。そういうことをやってきた人間が、「(一般的な)おいしさについての仕事をやれ」と言われて、もう何も頭に浮かばないところからスタートしまして。 じゃ、このミッションに対しての自信は。 齋藤:ないです、本当になかったですよ。「できたら誰かやってほしいな」というぐらいの。料理もしないですし、おいしい店を知っているぜ、みたいなタイプでもないですし。 どうされたんですか。 ●歯が立たないなら人の力を借りよう 齋藤:私だけの力ではまったく歯が立たないことは明白でした。でも、不二製油には油脂とたん白に関するスペシャリストはたくさんいるわけです。 そちらはおいしさの研究をしている? 齋藤:いや、おいしさを構成する要素として、物性というか、食感とか口溶けのいい油をつくるとか、プロテインパウダーだったら、すぐに水に溶けるような粉をつくるとか、そういう技術開発は弊社の得意分野で普段から一生懸命やっているんです。 広報Oさん:基本的に、私たちのお客様(食品会社)からのご要望はそういう機能的なものが多いので。 齋藤:だけど、これを風味を創り出すほうに向けたらどんなことができるのかな、と。 これまでの組織であれば、たん白ならたん白、油脂なら油脂、と、それぞれの分野の研究で基本的に縦割りになっているんですけど、今回は何年もかけて油脂をやってきた研究者、たん白をやってきた研究者、それを含めて乳化・発酵をやってきた研究者、あとは生産のプロセス開発をしている研究者に集まってもらいました。 それでもまだ足りないと思って、調味料メーカーや香料メーカーの開発をやってきた人にも中途で入ってきてもらって、これまでの不二製油にはなかったダイバーシティー的な部署に、結果的になりまして。 それが成果につながったんですね。