「なるほどね」と思わせる、昭和世代には懐かしいクロノグラフ積算計の活用法とは?
業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。前回はクロノグラフのインダイアルが二つ目から三つ目スタイルになった理由について解説した(関連記事参照)。そこで今回はそのインダイアルに装備されているクロノグラフ時計の積算計について取り上げる。 【画像】テレフォンユニットのあるクロノグラフをもっと見る! クロノグラフとはそもそも装備されたストップウオッチ機構を作動させて秒単位で経過時間を計測するのに使う機能である。 そして積算計とは、その計測時間が1分を超えた場合に何分経過したのかを分単位で記録するために設けられたカウンターだ。例えば30分積算計だとするとクロノグラフ秒針が文字盤を1周(1分経過)するたびに1目盛り針が進む。そして最大30分までを記録するというもの。ちなみに12時間積算計の場合はクロノグラフ秒針が60周(1時間経過)ごとに1目盛り動く。 そしてここからが本題。何年頃からかは定かでないが、1950年代以降のクロノグラフの積算計をよく見ると、ここに掲載した時計(右側の45分積算計)のように目盛りの中で3分、6分、9分とこの3カ所の目盛りだけが他よりも長くなっていることがわかるだろう。 実はこれ「テレフォンユニット(TELEPHONE UNIT)」と呼ばれるもので、昭和世代の方であればご存じだと思うが、かつては日本もそうであったように電話の料金は3分単位で加算されていた。それをカウントするための目印として当時の分積算計に設けられていたものなのだ。 しかも当時のクロノグラフ時計にはメーカーを問わずこの目盛りを備えている個体は非常に多い。つまり当時においてもクロノグラフ機構の実用性をいちばんに実感できた最も身近な活用法は、電話の通話時間を確認することだったのだろう。 文◎LowBEAT編集部/写真◎モンテーヌサカエチカ(ワックマン クロノグラフ Ref.1376 27万5000 円)