地元客でにぎわう駅近中華料理店…近隣にはファミレスもあるが、繁盛している「一番の強み」とは【経営コンサルが解説】
新規事業を開発する際、「自社ならではの価値」を理解することは大切です。ここでは中華料理店B社の事例とともに競合他社と張り合ってきた強みを分析し、さらに繁盛させるための手段を紐解いていきます。中野正也氏の著書『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)より一部を抜粋・再編集し、自社価値の見出し方を学びましょう。 都道府県「開業率&廃業率」ランキング
中華料理店B社のケース
中華料理店B社の新規事業開発について見ていきましょう。 B社が運営している中華料理店のCFTチャート※を、図表1に示しました。中華料理店B社は、やや郊外の駅近にあり、近隣の住民でにぎわっています。B社としても「それらの顧客を大切にしたい」と考えており、C(顧客)は「近隣の住民」となります。 ※顧客・機能・技術の3点を頂点とした三角形型のチャートのこと。新規事業開発の担当者が議論を重ね、自社ならではの他社とは一味違う新規事業を考えるためのキャンバスとなる。 中華料理店はほかにも多くありそうですし、食事をするのであれば、ファミリーレストランなどの選択肢もあるでしょう。それらの競合店のなかで、中華料理店B社は、なぜ近隣の住民や会社員で繁盛しているのでしょうか。これを考えていきます。 中華料理店B社の「CFT」とは 繁盛している中華料理店が顧客に提供している機能や、顧客から見た価値には、店によってさまざまなものがあるでしょう。 常連が多くて居心地がいい、駅のすぐ近くで便利、メニューが多くていろいろな料理が味わえる、注文してからの待ち時間が少ない、店がキレイで雰囲気がいい、などさまざまな魅力が考えられます。 それらのなかでも、中華料理店B社の場合は、とくに餃子の評判がよく、来店客のほとんどが注文するとのことです。餃子の餡からあふれる肉汁や、特注してつくった皮の弾力性は、他店を圧倒的にしのぐとの評判です。この場合、B社のF(機能)は「おいしい餃子の提供」となります。もちろん、ほかの料理も十分においしく、競合店に劣るわけではありません。店の雰囲気も悪くありません。 それらのB社のさまざまな魅力のなかで、競合店ではなく、「あの店に行きたい」と思わせるものは何か。中華料理店B社を、競合店と異なる魅力のある存在にしているものは何か。それが餃子であり、B社の「中華料理店事業」のF(機能)といえます。 T(技術)はF(機能)を提供するための「技術」ですので、「餃子の調理ノウハウ」とあらわせます。T(技術)が「餃子の餡のレシピ」や「皮のつくり方」など、B社がもつさまざまな経験・技術・ノウハウを集約したものです。