「シロン」や「ヴェイロン」より格上とみなされるブガッティ「T35T」が5000万円ほどで手に入る!? レクリエーションに近いレストアの中身とは
数えきれないほどの勝利を獲得
T35とそのファミリーは、1926年の第1回「マニュファクチャラーズ世界選手権(同年のタルガ・フローリオを含む)」を制したのを皮切りに、ワークスおよびプライベーターとともに数えきれないほどの勝利を獲得し、間違いなく史上もっとも成功したレーシングカーとなった。くわえて、自動車に「機能美」という観念を発生させた開祖ともいうべき美しさもあって、T35に代表されるグランプリ・ブガッティは、100年後の現在にあっても自動車愛好家の最終目標のごとく崇拝されている。 そして、この名作を後世に残すべく高度なリプロダクションパーツが、英国やアルゼンチンの専門業者によって潤沢に製作・流通しており、新たに「新車」を製作することも困難ではないといわれているのだ。 実際、アルゼンチンに本拠を置く最大手のブガッティ用パーツ供給会社では、「Le Pur Sang」と命名されたヴィンテージ・ブガッティ各モデルの高度なレクリエーション車両を製作・販売していた時期さえあったものの、現在では道義的な理由から、少なくとも表向きにはコンプリート状態での販売はしないことになっているそうだ。
レストア、それともレクリエーション?
2024年9月7日、ボナムズ社の「Goodwood Revival Collectors' Motor Cars and Automobilia 2024」オークションに出品されたブガッティ T35Tは、2018年~2019年にかけて「ジェントリー・レストレーションズ」社によって、1926年にタルガ・フローリオで優勝したT35Tのオリジナル仕様にフルリビルトされた1台である。 ジェントリー社は、同じ英国の「アイヴァン・ダットン」社と並び、ブガッティの修復やメンテナンスの分野では世界の最高峰と称される工房。彼らはレストア用の「プロジェクト」としてこのT35Tを購入し、2009年に関連部品とともにドイツから輸入したが、その時点では走行不能なローリングシャシーだった。 ジェントリー社の長、スティーヴン・ジェントリー氏は、既存のオリジナル部品が摩耗していたり、品質が怪しかったり、安全性や信頼性に問題があると判断した場合には、英国内(ないしはアルゼンチン製も?)で再生産されたリプロ部品や交換部品へと換装しながら、このT35Tを再構築したとのこと。 ジェントリー・レストレーションズ社による、約18カ月にも及ぶレストア期間中には、かつて仏モルスハイムでつくられた純正T35Tスペックに忠実であることを保証するために細心の注意が払われたそうだが、走行性を向上させるために若干の現代的な改造が加えられたとのこと。このリビルド工程については、完全な写真記録が入手可能という。 シャシー(No. R4264)はモルスハイム製のオリジナルではないものの、T35の専用治具で測定した結果、完璧にオリジナルを「再現」していることが判明している。いっぽう「019A」と刻印された直8エンジンは、T35Tスペックのマグネトー点火の5ローラーベアリングとされている。つまり、本来のシャシーナンバーのないフレームを使用していることから、レクリエーションに近い内容のレストア車両とみるべきだろう。
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