税務調査を回避できる…という確定申告の「都市伝説」、バレないだろう、はほぼバレる
■ まだある確定申告の都市伝説 坂本:一部納税者に「相談窓口で、税務署職員が直接書類を埋めてくれる」という誤解があります。税務署の相談窓口では、納税者にスマートフォン、源泉徴収票や収支内訳書を持参していただき、スマホでe-Taxを操作してもらっています。税務署職員はあくまでも、横から「この欄にこの数字を打ち込んでください」と指南するだけです。 彼らが納税者の書類に直接数字を打ち込むことはありませんし、アドバイスをしたからといって、申告内容が正しいとお墨付きを与えたわけでもありません。 ――確定申告では、稼いだ収入を申告し、税金を納めますが、医療費控除や住宅ローン控除は、前年に払いすぎた税金を戻してもらう「還付」という側面もあります。 坂本:還付制度にも留意点があります。医療費控除は年間の医療費や医療機関への公共交通費が10万円を超えた分を所得から差し引ける制度です。家族で入院や日帰り手術などがあれば、利用できます。ただし、お得だから、という理由で還付申請だけをして、必要な申告を怠ると痛い目に遭うこともあります。 たとえば、最近は暗号資産への投資熱が高まっています。暗号資産の先物で相当額の利益を上げたのに「ばれないだろう」と、譲渡所得として確定申告しなかった一方、医療費控除だけは申請したという場合、国税当局は厳しく対処に当たります。 暗号資産のデリバティブ取引は、取引所や金融機関が毎年、利用者の取引記録や譲渡損益を国税当局に届け出ています。投資家本人が確定申告をしなくても、事業者経由などで国税庁に筒抜けになっています。 上記の事例の場合、「暗号資産で確定申告が必要とは知らなかった」という言い訳も考えられます。しかし、医療費控除による所得税の還付を申請するぐらいならばお金の知識はあるものとして、国税当局の心象を悪くし、過少申告加算税どころか重加算税も課される可能性があります。 ――「申告しなくてもバレないだろう」という思い込みは、深刻な都市伝説ですね。