障害のある元保護犬「みるくてぃ」 多くの人に助けられ自力で歩けるよう奮闘中!
排便時に異常に興奮
「何とかなるさ」で迎えたものの、最初の1カ月は大変すぎて、大変だということにも気づかないほどだったと言います。 みるくてぃは、生まれたばかりのときに里山の洞穴にきょうだい5匹でいるところを保護され、保護団体のスタッフと預かりボランティアさんにミルクを飲ませてもらって育った子です。 ところが、生後1カ月近くになっても、5匹中3匹は、まともに伏せたり座ったり、立ったり歩いたりすることができず、何らかの障害があることが判明。原因ははっきりわかっていませんが、小脳の異常の影響で、みるくてぃの場合はバランスが保てない、手足が突っ張る、首がぐらつくといったことのほかに、排便時に異常に興奮するという症状がありました。 「排便する前にものすごく興奮して心拍数が一気に上がって、頭をぶつけたりたりしそうで。危険なので支えが必要だったんですが、触れるとこちらがケガするほどでした。そのうえ、迎えてから1週間経ったのころ、みるちゃんが下痢をしてしまって。私たちはよかれと思って毛布やクッションをたくさん敷いたんですが、全部ウンチまみれのオシッコまみれ。奮闘する自分たちの手や顔、服も全部汚れて……ひどい状態でした」 迎えて1カ月もすると、排泄物が漏れにくいオムツの作り方や、オムツ交換にも慣れてきました。 2年経った今、みるくてぃの排泄の気配に想一朗さんはいち早く気づくことができるようになり、またみるくてぃも、排泄したくなると自分でマットの上に移動してきてくれるようになりました。 障害があっても、お互いに慣れることと創意工夫をすることで、乗り越えてきたのです。
できることはしてあげたい
奥村家にみるくてぃを迎えたころ、獣医師からは「おそらく歩けるようにはならないだろう」と言われていました。夫妻も、当初は「別に歩けなくても、みるちゃんはみるちゃんだから」と、歩けるようになることをとくに目指してはいませんでした。 「でもあるとき、私たち2人のほうに来ようとバタバタもがいているみるちゃんを見て、『あ、みるちゃんは歩きたいんだ。それなら歩けるようになるよう協力しよう』って思ったんです」 最初は道具も何も使わず、屈んで手で支えながら歩かせる練習からスタートしました。その後、きょうだい犬の飼い主さんから介護用ハーネスのことを教えてもらって導入してみたところ、革命的に楽なことが判明。 さらに、まだ成長中だからと手を出せていなかった犬用車椅子も、インスタグラムのフォロワーさんが申し出てくれて、借りられることに。初日は怖くて暴れたものの、2日目には車椅子で寝てしまうほどリラックス。徐々に慣れさせて練習をするうちに、少しずつ歩くことができるようになっていきました。 もう一つ大きかったのが、犬の整体師・ぱと先生との出会いです。 きっかけは、みるくてぃのインスタグラムを見たぱと先生から、「ぜひみるちゃんに施術させてください!」と長文のメッセージが送られてきたこと。メッセージを読んで「いい人に違いない」と、昨年夏から現在まで月1~2回、施術のために半日ほど時間を作ってもらっています。 「ぱと先生は私たちよりも、みるちゃんが歩けるようになると強く信じていて。というか、『みるちゃんはもう歩いていますよ!』とおっしゃってくれて、『そうか。他の子とは違う形だけど、みるちゃんは歩いているのか』と考え方を変えさせてくれました」