いまやヘルスケア部門が稼ぎ頭に…事業転換で七変化する「富士フイルム」は、利権まみれの「医療業界」の革命児となるか
富士フイルムの「変身の術」
銀塩写真が衰退するはるか以前、旧富士ゼロックスは1962年に、米ゼロックス(傘下のランク・ゼロックス)と富士写真フイルム(現・富士フイルムホールディングス)の合弁会社として生まれた。 この時点で、(銀塩)写真以外の他分野への進出に関する布石が打たれていたといえる。しかも、複写機(複合機)ビジネスは「写真」も含まれる「イメージング」の一分野だ。既存の技術(資産)を有効に活用した「横展開」の教科書にしたいほどの成功事例である。 銀塩写真ビジネスにおける革新的風土や、すでに1962年から始まっていた「既存技術(資産)」を活用した横展開が、コダックとの明暗を分ける大きな原因になったと考える。 投資の神様バフェットは、「社長が、さあ、今日から経費節減するぞ!」と宣言する企業には「投資をしたくない」と述べている。「経費削減」は企業にとっての永続的テーマであり、「日常的に行うべきこと」なのだ。したがって、思い出したように「経費削減キャンペーン」を行うような経営者は能力が低いということである。 同じように「業態転換」も「革新」の一つの形態である。 市場環境が変化する中でビジネスを行っている企業は「常に革新を行う」ことが求められる。したがって、会社の経営が危機になってから、「さあ、今日から革新(業態転換)するぞ!」と宣言する企業が「業態転換」を成功させることも困難である。 もし、業態転換を成功させたければ、「追い風の時にも、危機感を維持」して「常に革新的風土を失わない」ことが重要なのだ。
ゼロックス関連での「失敗」はどう評価すべき?
東洋経済 2017年6月14日「富士フイルムHD、『不正会計』の絶妙カラクリ」、産経新聞 2017年6月19日「ゼロックス不正 海外でも統治を徹底せよ」などで富士フイルムの「不正会計事件」が伝えられた。 同社自身の報告は、富士フイルムHP 2017年6月12日「第3者委員会による報告書の概要と今後の対応について」を参照いただきたい。 この事件は、富士フイルムの統治能力に大きな疑問を投げかけた。さらには前記産経新聞記事で指摘されているように、「見過ごせないのは、富士ゼロックスの副社長が2年前に不正会計の存在を知りながら、これを部下に隠蔽するよう、直接指示していたことである」。 5月14日公開「投資で成功したければ基本は嘘を見抜くこと、そして『はずれ屋』が『買うな』という時こそ買うべき時だ」3ページ目「企業の嘘を見抜くことが大事」と述べた。さらには同4ページ「『合法的』操作」の問題も考えなければならない。 だから、バフェットは、「台所でゴキブリを見つけたら、それが一匹だけのはずはない」と述べるのだ。つまり、「我々の見えないところでゴキブリが大量に繁殖している可能性が高い」ということである。 そして、富士フイルムがそのケースに当てはまらないと確信できる要素は今のところ存在しない。 また、その富士ゼロックスを富士フイルムの完全子会社にした経緯は、富士フイルムビジネスイノベーション(後継会社)に詳しい。最終的に完全子会社にしたという判断は合理的で正しいと思うが、それまでの複雑な経緯は、やはり「統治能力」に疑問を感じさせる。