元財務省“超エリート官僚”が書いた「ビジネス教養本」が“密かな人気”になっていた…その「すごい中身」を明かす!
管理職向けのリーダー論はビジネス書の定番ジャンルだが、いま全国の金融機関関係者の間で密かに注目されている書籍がある。今春刊行された『管理職が持つべき決断力 戦史の「韻」をつかめ』(産経新聞出版)がそれだ。 【写真】これから給料が「上がる会社」「下がる会社」全一覧…! 地味なタイトルだが、内容は超実践的。そのノウハウを明かすのは財務省理財局長、国税庁長官を歴任した中原広氏だ。財務キャリア官僚として、国家財政の中枢で厳しい折衝を重ねてきた経験と豊富な戦史知識から得た教訓を詰め込んでいる。金融機関幹部向けのテキスト用に販売中というが、一般読者にとっても歴史を見る眼を鍛える教養書として使えるとして、一部で話題の書となっているのだ。
日本の「病理」
「戦争という国家や民族の存亡を賭けた極限状況に関するものの方が、その緊張感や深刻さからより端的にヒントを示してくれるような気がします。そのため、本書の30の章のうちの大半が広義の戦史並びにそこに登場する人物に話題を採っております」 中原氏が「はじめに」でこう記すように、この本はカエサルやナポレオン、日本の戦国武将らが活躍した戦史に偏っている。 とりわけ、現代の企業や組織と通底する太平洋戦争にみる「病理」が数多く指摘されているのが大きな特徴だ。 そのベースとなる知識は防衛省が刊行した公式戦史102巻であり、手抜かりはどこにもない。 では、企業や組織と太平洋戦争を戦った日本軍に共通する病理とは何か――。
「人事問題」の正しい考え方
中原氏は太平洋戦争末期の戦艦大和の沖縄への無謀な出撃決定を一つの事例として挙げている。 専門的知見やデータの裏付けで「無謀さ」が証明されているにもかかわらず、「空気による支配」が勝った代表的なケースだ。 この非合理的な「空気による支配」の危険を予防するには、特定の命題を絶対化しないこと、普段から訓練とはいかないまでもしっかりと意識することが肝要だと指摘する。 以前流行った「KY」とは「空気を読めない」ではなく、「危険予知」の略語としてとらえるべきだろう。 多くの企業が頭を抱える喫緊の人事問題への対応策も読みどころの一つだ。 第22章の「下に臨むに寛なり 池田輝政の人事政策」では、優秀な人材をどう慰留するかを、戦国・江戸期の武将・大名である池田輝政の事例から引いている。 寝ている間に両刀を盗まれ、職を辞する意向を示した臣下に対し、輝政は歴史上の類例を紹介してミスの軽重を論じ、見事慰留に成功したうえ、さらなる忠誠心を調達したケースを紹介している。