いまやヘルスケア部門が稼ぎ頭に…事業転換で七変化する「富士フイルム」は、利権まみれの「医療業界」の革命児となるか
「写真」分野でも挑戦を続けている
日本経済新聞 5月31日「富士フイルム、英国の写真旗艦店舗を刷新 自撮りブース」と報じられた。 2000年以降の銀塩写真の凋落ぶりはすでに述べたとおりである。「市場消滅」と言ってもよいくらいだ。だが「写真市場」が消滅したわけではない。むしろ手軽に撮影できるデジタルカメラ、さらにはスマホ内蔵カメラなどによって「写真市場」は、爆速で拡大したといえる。 ただし、その「巨大市場」においても、デジタルカメラがスマホ内蔵カメラに敗れた。「フィルム」どころか、「(デジタル)カメラ」さえ必要なくなり、スマホの一機能になってしまうと写真ビジネスの収益化のハードルは上がる。 だが、こだわりを持つ人々向けの高級デジカメや、エンタテイメントとしてのプリクラなどの需要は根強い。そのような需要に対して、前記「英国の写真旗艦店」を始めとして挑戦を続ける同社の姿勢は高く評価できる。 実際、過去を振り返れば、特許庁「とっきょ」の中の「写ルンです(富士フイルム株式会社)」で紹介されている世界初のレンズ付きフィルムは、その革新性と前記TV・CMの斬新さが上手く組み合わさって、1986年の発売以降大ヒットとなった。 さらに、1990年代前半からの「IT・インターネット革命」が加速し、好調であった銀塩写真の将来に暗雲がかかり始めた1998年に発売された「チェキ」も、2000年以降の写真フィルム市場の急速な衰退の中で、手軽に撮影できるインスタントカメラとして人気を博した。 もちろん、富士フイルムの成功には「業態転換」が大きく貢献しているが、その大胆な業態転換を成功させた背景には、銀塩写真ビジネスで育まれた「革新的風土」が存在すると見るべきであろう。 「本業」で革新を起こせない企業が「業態転換」に挑んでも、単に(儲からない)新しい事業が増えるだけということである。「業態転換」は企業にとって最大級の革新である、企業風土に革新性が無ければ、「業態転換」という革新は実現できないということである。