【Q&A】核兵器禁止条約とは?
核兵器の保有や使用などを禁止する核兵器禁止条約。核兵器を非人道的で違法と断じ、「核なき世界」を目指す史上初の国際的な枠組みです。しかし、米国やロシアなどの核保有国のほか、日本も参加していません。「唯一の戦争被爆国」である日本が今後、条約にどう関わるかが注目されます。
Q:核兵器禁止条約って何?
核兵器の開発、製造、保有、実験などを全面的に禁じる取り決めのことです。2017年7月、国連総会で122か国・地域の賛成で採択されました。条約が効果を発揮するためには50か国・地域での批准(条約に同意するための手続き)が必要でした。2020年10月にその条件が満たされ、発効は21年1月22日です。 条約をめぐっては、オーストリアなどが主導し、交渉開始に向けた決議案を国連に提出。採択には、2017年にノーベル平和賞を受賞した非政府組織(NGO)の「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN=アイキャン)」が中心的役割を果たしました。
Q:これまでに同様の枠組みはなかったの?
核兵器を制限する多国間の条約としては、1970年に発効したNPT(核兵器不拡散条約)があります。ただ、NPTが核兵器の「五大保有国」とされる米国、ロシア、英国、フランス、中国の5か国には核保有を認めているのに対し、核兵器禁止条約は核兵器そのものを違法と位置付け、その廃絶を目標に掲げています。 しかし、核兵器禁止条約に「五大保有国」は参加を拒絶。事実上の保有国であるイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮も参加しておらず、条約を守る義務はありません。
Q:日本はなぜ不参加なの?
米国の「核の傘」に安全保障を依存しているため、と言えます。ドイツや韓国など非核兵器保有国も参加していません。 日本の外務省のホームページでは、日本が「唯一の戦争被爆国」であり、核兵器禁止条約の掲げる目標は共有している、と説明しています。その一方、北朝鮮など核兵器の使用をちらつかせる相手に対し「日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要です」と付け加えています。 条約前文では、核兵器の被害を受けた被爆者の苦しみについても言及しています。「唯一の戦争被爆国」でありながら参加意志を表明していない日本政府に対して、広島や長崎で被爆した人たちを中心に、署名・批准を求める声が上がっています。
Q:今後のスケジュールは?
発効から1年以内に締約国会議が開かれ、そこで核廃絶に向けた具体的な手法などが議論される予定です。参加している国・地域は中南米やアフリカ、東南アジア、オセアニアなどの小国が大半を占めます。 条約に批准していない国もオブザーバーとして締約国会議に参加できる、とされています。日本がどう関わるかが注目されていますが、政府は「慎重に見極める必要がある」(菅義偉首相)と参加の可否を明確にしていません。