メイウェザー、パッキャオは名勝負だったのか?
最終ラウンド。 残り10秒を示す合図が鳴ると、ロープ沿いにステップを踏みながらメイウェザーは、まだ試合中にも関わらずに右手を掲げた。7回以降、パッキャオの猛攻を究極のディフェンス技術と、左ジャブ、右のカウンターで余裕をもっていなし続けてポイントを重ねた。「世紀の一戦」を勝利したという確信が、メイウェザーをそういう行動に走らせた。最後の最後までリングを華麗に舞いながらのゴング。コーナーポストに駆け上ると、会場は大ブーイング。ファンは、パッキャオと正面から殴り合わなかった、そのメイウェザーのファイティングスタイルに「ノー」を突きつけた。ジャッジの一人が、118-110、2人が116-112とつけての3-0の判定勝利。 リング上でインタビューを受けたメイウェザーは満足そうに「彼がプレッシャーをかけてくるのはわかっていた。だから頭を使ってアウトサイドから動いた。コーナーに追い込んできて打つのも読めていた」と、試合を分析。「この試合の価値は、歴史が語ってくれるだろう」と続けた。 一方、敗れたパッキャオは、敗者の顔をしていなかった。 「私は勝ったと思った。彼は何もしていない。外を動いていただけだ」 インタビューアーが「終始、相手ペースだったのでは?」と質問するも「彼のパワーは、マルガリートやコットほどではなかった」と、判定に納得がいかないと訴えた。 1回、メイウェザーは、足を使わず中央で受けて立った。ファーストブローはメイウェザーの打ち下ろしの右だった。だが2回からはパッキャオの強烈なプレッシャーが始まる。コーナーに追いつめられ、何度も、メイウェザーはクリンチに逃げる。4回にはメイウェザーのジャブの打ち終わりに左ストレートをヒット。よろけるようにロープに下がったメイウェザーに猛ラッシュをかけたが、堅いガードで阻まれてつめきれない。 試合後パッキャオは「試合前に右肩を痛めていた、一度は延期を考えた」と打ち明けたように体力への不安があったのだろう。6回に勝負に出た。プレッシャーを強め、ガードの上からでも強打を打ち込んでいく。ロープを背負わせ、ボディに左右がめりこんだが、メイウェザーは「効いていない」とクビを振った。 だが、7回以降、ペースは完全にメイウェザーへ。左ジャブが増え、右のカウンターをちらつかせてくるのでパッキャオの突進力が鈍る。ステップワークと、抜群の反応のスウェーでパンチを外し、至近距離に入られても、ブロック、パーリングで、まともなブローはひとつも許さない。コーナーにつめられるとガードをかためたまま、上半身を右前に倒して、懐を深くすると、パッキャオがラッシュしても、すべてのパンチがディフェンスされてしまう。10回からは、メイウェザーは、もう恐怖感が消えスムーズな動きで翻弄した。