国民民主党が掲げる「103万円の壁」は突破可能だが…それを阻む「真の元凶」の正体
「基金」「予備費」という内閣の財布
例えば、財政投融資に代わって、今や国の第二の財布となりつつある「基金」。国の府省庁が設置する約190の「基金」の残高が20年度末から急増している。 2019年までは2兆円台で推移していた残高(使われていないお金)が、20年には8.3兆円、21年には12.9兆円と跳ね上がり、ついに22年度末には約16兆6000億円と16兆円を超えた。 もちろん「基金」がコロナ対策や物価高のために使われた面はあるが、ただ無駄だと思われるものも多い。 いい例が、コロナ対策で中小企業などの借入金利を補填する「特別利子補給事業」として1000億円必要として積まれた「基金」のうち、使われたのはたった147億円。あとは積みっぱなしで年度末に2000億円をすでに超える残高になっている。 基金のお金は税金や国債だが、一般社団法人など省庁の外部に置かれるため、国民や監督官庁のチェックが行き届きにくくなっている。 国会でチェックされないことをいいことに膨れ上がっているのは、「基金」だけではない。災害などに備えて政府が使えるようにしている「予備費」も、ここ数年で膨大に膨れ上がっている。 予備費はこれまで3000億円程度で推移していたが、コロナ対策として20年に12兆円となり、その後も5兆円、10兆円という巨額な予備費が恒常化しつつある。予備費は、国会の承認がなくても使えて、何に使ったかは事後報告ですんでしまう政府の裁量で使えるお金。今や、内閣の財布といって差し支えないだろう。
岸田政権の「ステルス増税」
過去最高の税収を更新し続けていることこそが、国会を通す必要のないお金が増えている大きな理由である。 税収が増え、政府が好き勝手に使えるお金が増えるーーそのぶん納税する家計や企業が貧しくなっているということだ。 だとすれば、家計の手取りを増やすために14兆円も増えた税収のうち7兆円を家計の手取り増加に充てるのはそれほど変なことではないし、難しいことでもないだろう。 この先も、国民の生活の先細りは続きそうだ。岸田前首相は「増税はしない」と言ったが、これもまやかし。実際にはインボイス制度の導入で売上1000万円以下の事業者は増税になっているだけでなく、1000万円以下の事業者に仕事を発注している会社は消費税の増税分を被り、仮に増税分を被らないまでも経理の負担増などがかなり増えている。これは、実質増税に近い。 また、110万円の無税贈与の「持戻し」拡大で実質増税もしている。さらに、「森林環境税」が導入され、2024年度から、国内に住所のある個人に対して課税される国税で、個人住民税の均等割と合わせて1人年間1000円が森林整備の目的で徴収されている。 加えて、2024年度の税制改正大綱では扶養控除の縮小で、16-18歳の所得税控除額38万円が25万円に、住民税の控除額33万円が12万円に縮小される。控除を減らせば、これも実質増税になる。この改正では、そのぶん手当を出すから手取りは変わらないというが、控除と違って手当などいつでも縮小できるものだ。