カナダが“アジア系と共生する道”を選んだ経緯 アメリカよりも欧州、なかでも北欧に似ている
「カリフォルニアにヒスパニック系の政党、ニューヨークにユダヤ人の政党」 そうなっても不思議はないのに、文字通り“ユナイテッド(統合)”されているのかもしれません。 ■大国から距離を置く「北米の北欧」 多文化共生で移民に門戸を開く国際協調路線で、苛烈な自由競争よりも、国民生活にある程度、政府が介入しながら協調を選ぶ……。 「自由党にしても保守党にしても、アメリカよりもヨーロッパ、なかでも北欧に似ている」
カナダの政党に詳しい専門家と議論していると、私はそう感じます。それはすぐ隣の超大国から距離を置くという、ある種の知恵ではないかと思うのです。 カナダの場合、アメリカという超大国がすぐ南にあります。国内は競争社会、国外でも“世界の警察”もしくは“利害の対立”で、常に争いの渦中にいる、ドラえもんで言うならジャイアン的なお隣さんです。 北欧諸国の場合、“南側のお隣さん”はドイツ、フランス、イタリア。どの国も中世には領土の奪い合い、18世紀から第2次世界大戦には植民地の取り合いと、激しい戦争を繰り返してきました。そこで距離を置いていたのが北欧です。
「南のほうの人って激しすぎるよね。ちょっと一歩引いておこうか」 さらに北欧の場合、東にはロシアという“ジャイアン的なご近所さん”もいます。北欧、特にフィンランドは歴史的にロシアに巻き込まれていますし、ロシアのウクライナ軍事侵攻を受けた北欧諸国は「いやいやいや、私たち近所なだけで関係ないので!」とNATO寄りになっています。 このように見ていくと、北欧とカナダは似ていると感じます。カナダのリベラルとは、強大なお隣さんとは違う、独自の多文化共生の道を模索した結果なのかもしれません。
山中 俊之 :神戸情報大学院大学 教授、国際教養作家、ファシリテーター