《「ハガキでごめんなさい」全国コンクール》「言いそびれた『ごめんなさい』」には、なぜ泣ける話と笑える話が同居しているのか
子どもがかくした母のスマホの行方
〈<お母さんとお父さんへ 朝、お母さんとけんかしたとき、お母さんのスマホをゴミぶくろにかくして学校に行って帰ってきたら、ゴミが出されてしまい、お父さんがリサイクル工場まで、とりに行くことになってしまいました。 お父さん、お母さん、本当に・・・・ ゴメンナサイ>(第16回ナンコクスーパー賞)〉 鹿児島県志布志市の小学生からだった。 志布志市は知る人ぞ知るリサイクル自治体だ。廃棄物全体の76.0%(2022年度実績)を再資源化し、全国の市では18年連続で1位になっている。ごみを燃やす清掃工場はなく、(1)24分別して再資源化する資源ごみ(2)堆肥化する生ごみ(3)一部を再資源化に回すなどする粗大ごみ(4)埋立処分する一般ごみ--という形で処理している。スマートフォンは一般ごみとして出されたのだろうか。他の自治体のように、焼却場へ運ばれていたら助からなかっただろう。再資源化で一般ごみが少ないから容易に探せたのか。 〈<植物の研究をしているあなたが、 フィールドワークのついでに 集めてくれたキノコ、 あなたの味噌汁にだけ入れて ごめんなさい。>(第19回優秀賞)〉 福岡県の人から届いた。気持ちは分からないでもない。
相手との深い関係があってこそ笑い話になる
〈<医者から痩せるように言われ、 「一緒に歩こうか」と言ってくれた夫よ、 ごめん…。 あなたがシャワーを浴びている間、 こっそり冷蔵庫の缶ビールをあけてました。 せっかく歩いた努力も 麦の泡。 (今度からは糖質ゼロにします)>(第20回優秀賞)〉 汗吹きのタオルを首に巻いたまま、女性が「ぷはー」とビールをあおる姿が描かれていた。すごく美味しそうに見える。風呂場から出てきた夫は、妻からアルコールの臭いがしただろうに、「それほど飲みたいなら」と気づかないふりをしていたのかもしれない。埼玉県から寄せられた。 こうして見てみると、一定の傾向があるような気がする。謝罪が笑い話になるのは、相手との深い関係があってこそだ。 他人や見知らぬ人であっても、似たことが言える。 〈<60代ぐらいのおばさんへごめんなさい。 僕は60代ぐらいのおばさんにバスの席をゆずろうとしましたが、そのあとに乗ったかわいい女性の方におもわず席をゆずってしまいました。ごめんなさい。>(第18回ナンコクスーパー賞)〉 「ごめんなさい」は相手がいるから言える。相手の身になって考えた時、「申し訳なかったな」と心が傷む。究極の思いやりの言葉であるからこそ、涙が出るような話や、笑える話になり、審査員の心に響く。 審査員も務める南国市観光協会の安岡事務局長は、「『ごめんなさい』は相手の寛大さに尊敬を込めて使われる言葉とも言われているそうです。相手との関係で意味も変わってくるのでしょうね。だから涙あり、笑いありなのでは。 また、謝罪は普通、ネガティブで暗い事柄を想像します。でも、コンクールではハガキに書くことでスッキリする面もあるので、笑える話になっているのかもしれません」と分析する。