《「ハガキでごめんなさい」全国コンクール》「言いそびれた『ごめんなさい』」には、なぜ泣ける話と笑える話が同居しているのか
わさびはいらない、鬼監督の目に大粒の涙
〈<陸上部監督30年。ついに迎えた勇退式。 これまで鬼監督と称された私を泣かせようとわさびを用意してくれた選手たち。 悪い。花束が見えて涙がフライングしてしまったよ。 (わさびは家で使います。)>(第19回南国市金融団賞)〉 生徒の背中から、後ろ手に持った赤い花束がのぞく。思わず嗚咽しそうになって口を押さえる白髪の監督。止まらなくなった大粒の涙が描かれていた。厳しい指導は情熱と生徒を思う気持ちの裏返しだ。それに応えた愛弟子達。絆があるからこそ、涙があふれたのだろう。それでも鬼監督としては「ごめんな、涙が出てきた」と口に出せなかったのかもしれない。 こうして並べると、深い人間関係や絆があるからこそ、言いそびれたり、言えなかったりする「ごめんなさい」があることに気づく。
幼い私が「パパを一番に乗せてあげる」と言った車は…
逆に、笑える「ごめんなさい」も多く入選している。 〈<小さい頃、 霊柩車の運転手に なるのが夢だった私。 「パパを一番に 乗せてあげるね。」って 言ってごめんなさい>(第9回優秀賞)〉 黒くて大きく、宮型と言われる神社の屋根を載せたような車両が多かった霊柩車は、死の意味さえ分からない幼児にとっては、かっこいい乗り物の一つなのかもしれない。成長してからは、思い出すたびに冷や汗が出ただろう。千葉県船橋市の15歳から寄せられた。 〈<夫へ うっかり あなたのシャンプーを買い忘れた時、やむなく こっそり 愛犬用のシャンプーを詰め替えました。ごめんなさい、でも 「なんだか いつもより 髪がしっとりしてるな~」 と、気に入っていたようで よかったですぅ♡>(第12回南国市金融団賞)〉 愛媛県松山市の人から届いた。犬用のシャンプーには値が張るものもある。買い忘れた夫のシャンプーとどちらが高かったのだろう。