自然災害による被害や地下鉄民営化など 2018年の鉄道を振り返る
次世代新幹線「N700S」や観光列車が次々と登場
暗い話題だけではありません。車両面では様々な明るい話題が見られました。JR東海では、東海道・山陽新幹線で現在主力として活躍する「N700A」の後継車両「N700S」を開発。その第1編成が6月にお目見えしました。 「S」は“最高”を意味する「Supreme」の頭文字で、文字通り最高のサービスや安全性能を目指しています。普通車も全座席に電源コンセントが装備されたほか、床下にはバッテリーを搭載することで、停電時などに自力でトンネル内や橋梁上から移動することも可能になりました。 また、現在の営業車両にもちょっとした変化が。東海道・山陽・九州新幹線では、この秋から無料Wi-Fiサービスが始まりました。現在、サービスを提供する機器の取り付け作業が順次行われており、完了した編成からサービスが提供されています。 観光列車では、3月に叡山電車でデビューした「ひえい」が大きな話題となりました。楕円をモチーフにしたそのデザインは、これまでの鉄道車両にはない斬新なもの。車内は近未来的な雰囲気でまとめられており、1人当たりの幅が全国でもトップクラスという広さで、ゆったりと乗車することができます。特別料金が不要というのもポイントで、休日には乗車待ちの列ができるほどの人気を誇っています。 JR西日本も、山陰地方で観光列車「あめつち」の運行を開始しました。沿線の工芸品が飾られた車内は、日本海や宍道湖を眺められる座席配置。地元の食材を使った食事やスイーツを味わいながら、ゆったりとした旅が楽しめます。国宝・松江城や出雲大社など、沿線には見どころも多く、点在する温泉と合わせてふらりと出かけてみるのも良いかもしれません。
大阪市交通局が民営化
もうひとつ、忘れてはいけないのが大阪市営地下鉄の民営化です。15年以上も前から議論が繰り広げられてきましたが、この4月に大阪市高速電気軌道株式会社、通称「Osaka Metro」が誕生。新たなスタートを切りました。 この民営化は、これから少子高齢化などで鉄道の利用者が減ってゆくなか、将来も地下鉄事業を安定して運営してゆくための方法として行われました。民営化が完了するまでに、大阪市交通局の内部では組織の変更をはじめ、コストや営業効果といった“民間意識”の強化などが進み、累積赤字を一掃するなど大きな効果を上げています。 今のところ、大阪市営地下鉄の「マルコマーク」がOsaka Metroの「OMマーク」に変わった程度しか変化は見られませんが、今後は駅ナカ事業の強化や不動産・ホテル事業への進出など、さまざまな取り組みで収益を上げ、それが便利で安全な地下鉄の運行につながってゆくことでしょう。 大阪の地下鉄は歴史も古く、独特の雰囲気を持つ駅が多く残っています。慣れ親しんだ利用者はもちろん、国内や海外からの観光客に「これが大阪の地下鉄だ」と胸を張れるよう、昔ながらのデザインを生かした駅が増えることを望みます。