くも膜下出血を経験した独身漫画家が語る「生きる準備と死ぬ準備」 #病とともに
10/29は「世界脳卒中デー」。脳卒中の一つであるくも膜下出血は、40代~50代の働き盛りの女性に多く見られ、3分の2の方が死亡、または麻痺や言語障害などの後遺症が残るといわれている。2020年夏、くも膜下出血を発症した漫画家・新月ゆきさんは、手術・入院・後遺症のリハビリといった実体験を基にした漫画『くも膜下出血のラブレター』を描き、SNSで大きな話題となった。現在、薬を服用し、3カ月に1度のペースで定期検査に行く以外は普通の生活を送っているという新月さんに、発症から4年経過したいまの心境を伺った。(Yahoo!ニュース Voice)
40代でくも膜下出血を発症 その体験記を無料公開する理由
――2020年にくも膜下出血を発症されたそうですが、当時の状況をお聞かせください。 新月ゆき: 2020年の夏、平日に発症しました。普段と変わらない1日で、いつものように早めの夕食を食べていた夕方5時過ぎに突然頭が痛くなりました。少し休めばおそらく治るだろうと思い、ソファで横になりましたが痛みは収まる気配がなく、助けを求めた方がいいんだろうか、救急車を呼ぶべきか悩みました。頭痛は一過性のものかもしれないし、救急車を呼ぶと周りの人に迷惑をかけてしまうのではと抵抗がありました。 その間にも痛みがどんどん激しくなって結局我慢できずに、自ら119番に電話をしました。頭痛が始まってから5分ぐらい経過した頃だったと思います。この時早めに救急車を呼んだことが、命が助かった要因なんだろうなと思っています。 ――病院に運ばれ、「くも膜下出血」だと告げられた時の心境はいかがでしたか? 新月ゆき: まさか自分がと本当に驚きました。今回のような大きな病気については全く考えたことなく、ドラマや物語の中でよく聞く病気といった認識でした。普段から健康に気を使っていたし、運動習慣も取り入れていました。ストレスも溜めないようにし、睡眠時間も気にしていました。なので、私ができることはすでにやっているといった自覚もあったし、自負もありました。だけど発症してしまいました。 ――現在、病気の体験を描いた『くも膜下出血のラブレター』は無料で配信されています。なぜ無料にしようと思われたのですか? 新月ゆき: 私がこの作品を一番届けたいのは、くも膜下出血になる前の2020年の私自身なんです。当時の私に読ませたいものを、現在の私が描いているんです。だから、多くの人がすぐに読めるようにしたかったんです。それで無料が一番いいだろうと思いました。 私と同じような病気を発症していたり、自分の死と向き合って葛藤している人に届けたいなと思っています。そして、そのご家族や周りの方々など徐々に広がっていったらいいと思っています。