くも膜下出血を経験した独身漫画家が語る「生きる準備と死ぬ準備」 #病とともに
◆終活コンサルタント 吉川美津子氏の「専門家の目線」
――病気をきっかけに、身辺整理を始める方は多いのでしょうか? 吉川美津子: ご自身の病気がきっかけの方もいらっしゃいますし、自分以外のご家族に何かがあったタイミングで考えられる方が多い気がします。例えばご両親が病気を患った時、介護が必要になった時など、安全に暮らせるように物を片付けたり、身内で情報を共有することが必要不可欠になる。その際に、エンディングノートは有効なツールの一つになると思います。 ――エンディングノートで得られることは? 吉川美津子: エンディングノートの項目を書くことによって、情報はもちろんですが、自分はどうしたいのか、なぜそのように思うのかといった、自分自身の気持ちや考えを整理することができます。ご自身の気持ちを確認する、考えるという行為がとても大事だと思います。例えば医療について書く欄には「延命治療を希望する」「希望しない」といった項目があるのですが、延命治療をしたくないと思うのであれば、なぜしたくないのかを記入し、治療を希望する場合はどんな方法を望むのかなど、今の考えを明確化することができる。そしてエンディングノートを書く時に話し合う人がいるのであれば、今の自分の考えを一緒に共有できる役割を果たします。 ――具体的には何から始めたらいいのでしょうか? 吉川美津子: エンディングノートは書店やインターネットでも購入することができます。最近では雑誌の付録や、気軽にダウンロードできる物を出している自治体もあります。一度目を通し、わからないところは飛ばしてしまっていいので、書けそうだと思う項目を広く浅くでいいので書いてみるといいでしょう。 また、エンディングノートは一回書けば終わりというものではなく、心境が変わった際は書きかえることも大切です。5年後10年後に考えが変化していくこともありますので、時々見直す作業が大事かもしれません。エンディングノートを書くことで、これからの人生をどう生きるか考えるきっかけになると考えています。 ----- 新月 ゆき イラストレーター、漫画家。福岡県出身、現在は関東のシェアハウスに暮らす。2020年夏、突然の激しい頭痛に襲われ、くも膜下出血を発症。コロナ禍での手術と入退院、失語症のリハビリなどの数年にわたる実体験を漫画化した『くも膜下出血のラブレター』をWebにて配信中。 吉川 美津子 終活コンサルタント/社会福祉士・介護福祉士。 約25年前から死の周辺や人生のエンディング関連の仕事に携わる。駿台トラベル&ホテル専門学校葬祭ビジネス学科運営、上智社会福祉専門学校介護福祉科非常勤講師などを歴任。講演・セミナー等を行いながら、現役で福祉職としても従事。