糖尿病になると心臓病・脳卒中のリスクが2倍高まるのはなぜ?【医師解説】
糖尿病による心血管疾患はどう予防できるのか?
編集部: 糖尿病の人が心血管疾患を予防するにはどうしたら良いのでしょうか? 布目先生: まずは食事療法や運動療法を継続し、生活スタイルを改善することが重要です。血糖値が高い状態をそのままにしておくと動脈硬化が進行しやすくなるので、食事ではカロリーやコレステロール、糖質に注意することが必要です。 また有酸素運動や筋力トレーニング、ストレッチなどの運動療法も継続し、肥満や代謝の改善に努めるようにしましょう。もちろん、定期的に医療機関を受診し、医師に状態をチェックしてもらうことも大切です。 編集部: そのほかに気をつけることはありますか? 布目先生: 特に気をつけたいのは、高血圧と糖尿病が合併すると心血管疾患のリスクがますます高まるということです。研究により、血圧が高いと心臓病や脳卒中のリスクが高くなることがわかっています。 編集部: 高血圧になるとなぜ、心臓病や脳卒中のリスクが高まるのですか? 布目先生: 高血圧も動脈硬化の危険因子となるからです。血圧が高くなると血管の内部が傷つき、血管が厚くなったり、硬くなったりします。そのため動脈硬化が進みやすくなり、心臓病や脳卒中を引き起こすのです。 編集部: 具体的に、どれくらいリスクが高くなるのですか? 布目先生: 糖尿病で、上の血圧が150mmHg以上の場合、血糖値が正常で上の血圧が120mmHg未満の人に比べ、心疾患のリスクは8.4倍上昇することがわかっています。 同じく、糖尿病で上の血圧が150mmHgの場合、脳卒中のリスクは5.6倍になることがわかっています。そのため食事では血糖のコントロールに加えて減塩に気をつけるなど、高血圧対策も重要です。
動脈硬化を防ぐために
編集部: 動脈硬化を予防するためにはどんなことに気をつければ良いのでしょうか? 布目先生: 動脈硬化そのものを治療する薬は、現在ありません。そのため生活習慣の改善が必要です。特に食事と運動が重要になります。食事ではバランスのいい内容を心がけること。特に炭水化物や脂質の取り過ぎに注意する、ゆっくりよく噛んで食べるなど気をつけましょう。 また適切な運動を継続することも重要です。肥満を解消するだけでなく、悪玉コレステロールを減少させ、動脈硬化の予防効果が期待できます。悪玉コレステロールは動脈硬化を助長するとして知られています。 編集部: 悪玉コレステロールを減らすことが必要なのですね。 布目先生: はい。反対に、運動は善玉コレステロールを上昇させ、肥満の改善にもつながりますから、積極的に運動をするようにしましょう。 編集部: ほかに気をつけることはありますか? 布目先生: 喫煙は動脈硬化の危険な要因になります。そのため喫煙の習慣がある場合は禁煙するようにしましょう。 編集部: そのほか、医療機関ではどのような治療が行えるのですか? 布目先生: 食事療法や運動療法を行っても悪玉コレステロールの減少が見られない場合には、薬物療法を行います。 スタチンなどを用いることで、悪玉コレステロールの値を低下させる効果が期待できます。ただし、食事と運動が治療の中心となるので、必ず医師の指示に従って継続するようにしましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージがあれば。 布目先生: 糖尿病の治療で大事なのは、自分の現状を把握し、今の自分に適した治療や食事療法、運動療法などを行うことです。自己流になってしまうとどうしても生活習慣が乱れ、症状を悪化させる原因になりかねません。 定期的に医療機関を受診して、医師の診断のもと食事・運動・薬物療法を行い、動脈硬化を予防しましょう。また、すでに動脈硬化が見られる人は、さらに進行させないためにも、医師の指示に従うようにしましょう。