SNSに適応できず、しんどくなる子もーー小・中・高校生ががんばりすぎて燃え尽きる前の「SOS発信」教育 #今つらいあなたへ
小中学生が当たり前にSNSを使う時代。「同調圧力が強い分、がんばりすぎて燃え尽きている子が多いと思います」。子どものメンタルヘルスに詳しい、和歌山県立医科大学の藤田絵理子さんはそう話す。児童生徒の自殺者数は2020年に年間400人を超え、その半数以上が「背景不明」とされる。藤田さんが実践するSOS発信プロジェクトについて取材した。(取材・文:西所正道/撮影:宗石佳子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
人間関係のストレスが身体症状に
高校1年生の出嶋天葉(でじま・てんは)さんは、中学2年のとき、ときどき学校を休むほどのひどい頭痛に悩まされていた。キャプテンを務めるクラブの部員をどうまとめていけばよいのか迷ったり、顧問との意見の食い違いに苦しんだりすると決まって片頭痛がひどくなったのだ。 「友だちはいましたが、相談はしなかったです。1年生のとき恋愛とか友だち関係の相談をしたら、『あの子、重い話ばかりするから』と距離を置かれたことがあったので。周りの雰囲気に合わせることにも精いっぱいで、けっこうストレスをためていたのかなって」
そんな出嶋さんの内面に変化をもたらす授業があった。中学2年の3月に、通っていた和歌山大学教育学部附属中学校で受けた「SOS発信プロジェクト」である。 「悩みを抱え込まないで吐き出したほうがいいんだ、ということに気づかされました。ただ私の場合、1年前に距離を置かれた経験もあるので、最初は友だちではなく母に話しました。聞き流されることもあるんですが、吐き出すことで気分的にすっきりしました。気がついたら頭痛の症状もかなりよくなったし、顧問ともうまく話せるようになりました」 このプログラムは出嶋さんだけでなく、他の生徒にも影響があったようで、担任への語りかけや、「自分のストレスを書き出してみた」と相談室を訪れる生徒の数が増えたという。生徒たちの心を動かしたSOS発信プロジェクトとはどんな内容だったのだろう。