ヴァイオリニスト天満敦子さんが託された、作曲家ポルムベスクの遺作【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ポルムベスク『望郷のバラード』 薄幸の作曲家ポルムベスクの遺作
今日7月18日は、ヴァイオリニスト、天満敦子(1955~)の誕生日です。 彼女の経歴の中で特筆すべきは、1992年に文化使節としてルーマニアを訪問した縁がもとで、ルーマニア出身の作曲家チプリアン・ポルムベスク(1853~83)の遺作『望郷のバラード』の楽譜を託されたことでしょう。 帰国後に天満が奏でたポルムベスクの美しいメロディは人々を魅了。翌1993年に発売されたアルバム『望郷のバラード』は、クラシック界において異例の5万枚を超える売上を記録。哀愁に満ちた『望郷のバラード』は、天満敦子の代名詞のような作品となったのでした。 さて、この名曲を手がけたポルムベスクとは一体何者だったのでしょう。資料によれば、ルーマニア音楽界の雄エネスク以前の才能としてウィーンに留学してブルックナーに師事。将来を嘱望されながら、ルーマニア独立運動に参加して投獄され、29歳の若さで病により夭折したと記されています。 ちなみに、東欧革命前夜のルーマニアを舞台に描かれた高樹のぶ子の小説『百年の預言』のヒロインは、天満敦子がモデルです。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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