生成AIでコンタクトセンターを改革 住信SBIネット銀が効率性の「次に目指すもの」
銀行への電話でよく耳にする「しばらくお待ちください」。住信SBIネット銀行は最新の生成AI活用でこの課題に挑んでいる。2024年8月、同行は「GPT-4o」を活用した電話自動応対システムを導入。顧客の問い合わせに即座に対応できる体制の構築を進めている。 【写真を見る】生成AI「GPT-4o」を活用した電話自動応対システム 「電話で問い合わせても結局たらい回しになる二度手間は避けたい」。同行業務部の山本博一氏はそう話す。2020年から段階的に進めてきたコンタクトセンター改革で、チャットなどテキストベースの応対を全体の7割まで高めた同行。今回のAI導入は、残る電話応対の革新に挑むものだ。 顧客の声は商品改善やサービス向上の貴重なデータだ。同行は通話内容のテキスト化や応対履歴の分析を通じ、「ログインできない」といった顧客がつまずきやすい場面を特定。システム改善や案内方法の工夫につなげている。人とAIの共存により、対応品質と効率性の両立を目指す取り組みが始まっている。
チャットで変わる顧客対応、7割が"非電話"に
「できるだけテキストでの対応に誘導する」。住信SBIネット銀行が2020年にこの方針を打ち出してから、同行のコンタクトセンターは大きく変わった。現在では顧客からの問い合わせの約7割がチャットやWebフォームを通じたものとなっている。 この改革の背景には、電話対応の限界があった。「お電話ですと、なかなかつながらなくてお待たせしてしまうことが多い」と山本氏は説明する。特にネット銀行の場合、「ログインできない」という問い合わせが多く、これが解決できなければ全てのサービスが使えなくなる。迅速な対応が求められる中、電話だけでは顧客の期待に応えられない状況になっていた。 テキストベースの対応には、明確な利点がある。「チャットなら熟練したオペレーターは同時に複数の顧客対応が可能」(山本氏)だ。1人のオペレーターが2~3人の顧客に同時に対応できるため、待ち時間の削減につながる。 効率化のポイントは、現場の知見を生かしたナレッジ管理だ。同行は頻出する質問に対する回答テンプレートを用意している。一般的なAIによる自動提案システムは採用せず、「オペレーターが使いやすい形でナレッジを整備する方が、的確な回答を探せる」(山本氏)という判断だ。経験豊富なオペレーターには、体系的に整理された情報の方が使い勝手が良いためだ。 ただし、全てをテキスト対応に移行するわけではない。「電話で解決したいという顧客は確実にいる」(山本氏)との認識から、カード紛失やローンの相談など、特に重要度の高い問い合わせについては、電話窓口を維持。テキストと電話、それぞれの特性を生かした対応体制を築いている。