生成AIでコンタクトセンターを改革 住信SBIネット銀が効率性の「次に目指すもの」
GPT-4oが即答、消える"お待たせ音楽"
音声対応の強化の一つが生成AIを活用した電話応答システムの導入だ。2024年8月、同行は最新の生成AI「GPT-4o」を活用した電話自動応対システムの導入を開始した。OpenAIが開発したこのAIモデルは、従来モデルと比べて高い応答精度と自然な会話能力を持つという。 従来、電話窓口では「この窓口では対応できません」と案内して、結果的に顧客に二度手間を強いるケースが少なくなかった。「せっかくお電話をいただいたのに、窓口で回答できないのであれば、AIで回答してしまおうと考えた」と山本氏は導入の狙いを説明する。 新システムは、米Kore.ai社の対話型AIプラットフォームにGPT-4oを組み込んで構築。顧客が電話で問い合わせ内容を話すと、AIが内容を理解して適切な回答を行うか、必要に応じてオペレーターへの転送を判断する。「お客さまの反応を見ていると、比較的ポジティブに受け止めてくれている」(山本氏)という。 効果は明確だ。「以前はストレスに感じるほどお待たせしていたお客さまもいたが、今はそういった事態はほとんど発生していない」と山本氏は話す。AIによる即時対応が可能になったことで、待ち時間の問題が大幅に改善された。 ただし、現状はまだ発展途上だ。山本氏は「今はお客さまの発話の意図をわれわれのナレッジ(知識データベース)に当てはめて一問一答で返すことしかできていない」と課題を指摘する。今後は対話を通じて顧客の意図をより正確に把握し、的確な回答ができる仕組みを目指す。 まずは電話チャネルでの対応範囲を広げ、その後はテキストチャネルへの展開も検討する。「お客さまのニーズがあるところには拡大していきたい」(山本氏)として、段階的な機能拡充を進める方針だ。
データで探る顧客の"つまずき"
問い合わせデータの分析は、サービス改善の重要な手掛かりとなる。住信SBIネット銀行では、テキストや音声による問い合わせ内容を分析し、顧客がどのような場面で困っているのかを把握する取り組みを進めている。 「例えばログインができないという問い合わせでも、初回ログインでつまずいているのか、アプリの不具合なのか、長期間使っていなかったためにパスワードを忘れたのか。場面によって対応は変わってくる」と山本氏は説明する。問い合わせ内容を細かく分析することで、効果的な改善策を見いだすことができるという。 同行のコンタクトセンターでは、応対品質を測る指標としてNPS(顧客推奨度)を採用。テキスト対応後にアンケートを送信し、顧客満足度を継続的に計測している。「繁忙期は相対的に満足度が下がる傾向にある」(山本氏)として、応対品質の維持・向上に努めている。 一方で、応対品質だけでなく、効率性も重視する。オペレーターの評価指標には、1時間あたりの対応件数や処理時間なども含まれる。「応対品質が良くても、一定数の処理速度を維持できなければ効率が悪い」(山本氏)ためだ。 さらに、口座開設直後の問い合わせ率など、サービス全体に関わる指標も設定。「問い合わせの抑止策が効いているかどうかを判断する」(山本氏)材料として活用している。問い合わせの多い事項については、システム開発による解決や、顧客が迷わない位置への案内掲載といった対策を講じている。 同行の口座数は3年前の1.5倍となる770万口座に増加しているが、こうした取り組みにより、コンタクトセンターの人員規模を維持したまま運営できているという。データ分析に基づく継続的な改善が、効率的な運営を支えている。